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第71話 ちぎりたい鎖 <放置> 6

『ははっ。確かに。放置されるより、する方が、気合いいるよね。なんでそんなコトになってんの? ……かずちゃんか』  俺が“愛している”と宣ったコトに勇気は、重度のブラコンである胤樹の嫉妬が絡んでいるのだろうと容易に読み解いた。  上手い具合に逸れていく話に、拍車をかける。 「そろそろ俺を卒業して欲しいんだけどなぁ……」  俺にべったりな胤樹を思い浮かべ、疲弊した心を乗せて空へと放る。 『かずちゃんも、まぁちゃんに似て、ヤンデレ風味だもんなぁ。その上、重度のブラコン』  ははっと豪快な勇気の笑い声が、耳につく。 「笑い事じゃないよ」  そう仕向けたのは俺だとしても、あの邪魔くさい胤樹の嫉妬は、笑い飛ばせるほど軽くはない。 『ま、弟なんだから、お前が一生面倒見るしかねぇんじゃねぇの?』  くくっと嫌みに笑いながら、紡がれる勇気の言葉に、溜め息が零れた。 「一生とか言わないでよ。頭、痛くなる……」  嘆く俺に、勇気は感慨の声を漏らす。 『まぁちゃん、手こずらせるって凄いよな……』  さすが弟だわ、と本気で感心している様子の勇気に、俺は気持ちを切り替えるようと頭を振るった。 「あと1週間。……1週間後にはケリつくから。あとは任せるよ」  吹っ切るように深く(まばた)き、丸投げる。 『任せるって何だよ?』  呆気に取られたような勇気の声に、にたりとした笑みが零れた。 「好きにしていいよ。大地がそうなった原因だろうしな」  俺の言葉の意図を読み解いた勇気が、素っ頓狂な音を放つ。 『は? だいちゃん掘ったの、かずちゃんかよ?』  驚きに塗れた勇気の声に、くすくすと笑い肯定してやる。 「てか、大地、胤樹のコト、好きだろ?」  じとっとした瞳を向けるように、空を見やり、勝ち誇った声を投げた。 『なるほどな。だから、あいつオレに泣きつかなかった訳ね……』  なにか不都合があれば、すぐに兄である勇気に泣きついている大地が(だんま)りを決め込んだ。  俺と勇気の力関係は五分五分だ。  だから、黙った大地に俺絡みのトラブルだと踏み、直接聞いてきたのだろう。 『色恋沙汰かよ。手ぇ出ししにくいなぁ……』  殴りつければ解決するような、力関係のいざこざじゃない今回。  勇気が出張ったところで、胤樹の心をどうにか出来るわけもない。  ぶつぶつと困ったと悩む勇気に、口を開く。 「用がそれだけってんなら、切るぞ?」  この調子なら、白根さんへの被害はないだろうと、俺は電話を切った。

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