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第77話 ちぎりたい鎖 <説教> 2

 掌の中で蠢き続けるそれを唇で挟んだ。  細かな振動を与える玩具に、舌を絡める。  鼻で継ぐ息が、熱を孕み荒くなる。 『挿れるために自分で準備するなんて、やらしいですね……』  妄想の中の抹樹が、煽る。  瞳を閉ざし、妄想の中の抹樹の姿を追う。  動き続ける玩具を唾液で濡らしながら、固い床の上に膝をつく。  口許の玩具を片手で軽く押さえながら、空いている手で、ずるずると下着とスラックスを下げた。 『そろそろ待てないでしょ?』  くすくすとなる抹樹の笑い声を脳内に再生し、唾液に塗れた玩具を、口の中から引き抜いた。  溢れた唾液が、重力に引かれ、ぽたりと床を汚す。  滑りを纏う今のうちにと、震える玩具を尻に宛がった。   機械の無機質な振動と唾液の滑りに、つぷりとそこに潜り込む。 「ふ、ぁ…………」  入口の浅いところで震え続けるそれを、きゅうっと締めつける襞。  異物を吐き出そうと蠢くそこを、軽く押さえながら、たらりと涎を垂らすペニスを握った。 『こんな玩具でいいんですか?』  くすくすとした笑いが耳の奥でこだまする。 『物足りないでしょ?』    ぁあ、足りないさ。足りるわけもない。  お前に教え込まれた身体は、もっと太くて長い……お前自身を求めてる。  ぐにぐにと蠢き、抹樹の形を思い出すように、奥が疼いた。  ペニスの代わりに、小さな玩具を締めつける。 『びしょ濡れじゃないですか』  ペニスに絡めた指先を抹樹の手つきに倣うように動かし、幻影を辿る。 『だらしないですね』  柔らかく叱るような音で紡がれる抹樹の幻聴に、指先は苛めるように尿道口を弄る。  抹樹の手つきを、声を、体温を思い出しながら、淫らに耽る。  微かに見える解放の糸口を、必死に辿る。  余計な感情を排除し、ただ悦に浸る。 「ぁ、………ふ、ンッ、…くっ…………」  手の中に吐き出した白く粘つく液体に、心の隅が欠け、出来た隙間で虚しさが嗤う。  浅く挿れていた玩具は簡単に異物として、吐き出された。  無機質な振動音を放ち続けるそれのスイッチを切る。  こんなことをしたって、満たされない。  わかっているのに、手を出してしまう愚かな俺。  満たされる方法は、熟知している。  ……でも。俺は、その手法は選ばない。  抹樹に縋るコトなどしない。  それが、せめてもの俺の矜持だから。

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