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第83話 ちぎりたい鎖 <説教> 8

「もう、関係無いんだよっ」  切り捨てるように放たれた声は、言葉尻も、纏う空気も、白根の方が関係を切りたがっているように感じられる。 「あんたが勝手に別れたと思ってるだけだろ。別れたがってるだけだろっ」  自棄糞に放たれた白根の言葉に、胤樹が噛みついた。 「兄さんに、責任取れって言ったんだよな? じゃあ、お前も責任取れよっ。あんな骨抜きにしといて、惚れられたら捨てんのかよ? 兄さんで遊ぶなっ!」  叱るような胤樹の声が、白根の怒りに火をつける。 「遊んだのは、お前の兄貴だろっ。飽きたんだろっ。飽きて捨てたのは、お前の兄貴だッ」  自分の言葉に、捨てられたのだと再認識した白根は、悔しげに自身の髪を握る。 「いっつもそうだっ……。こんな面白味のない人間、直ぐ飽きがくるんだ」  悄気て肩を落とした白根が、自分自身を嘲り、鼻で嗤った。 「俺は所詮この程度。飽きられて捨てられるコトくらいわかってたよ。見えていた未来…、思った通りの結末だ」  ははっと笑う白根の声は、乾いて掠れる。  今までの恋愛に当て嵌めて、落胆する。  だてに歳を食っているから、豊富な恋愛経験が、…悲しい失恋経験が、白根に諦めの気持ちをもたらす。  いつものことなのだと大人特有の引き際の良さを見せた白根は、格好悪く足掻いたりしない。 「恋愛にお決まりのパターンなんてねぇんだよっ!」  怒鳴り声に驚き、胤樹に視線を向けた。  胤樹の立場なら、白根が諦めて引いてくれた方がいいんじゃねぇの?  抹にぃが、胤樹の元に戻ってくるじゃん。  きょとんと見やる僕に、胤樹の怒号はその勢いを失わないままに、白根にぶつかっていく。 「相手にしてんは人だぞ? 人間に同じヤツなんていねぇんだよっ! 型に嵌めんな、偏屈オヤジっ!」  なんで胤樹が諦めようとしている白根を引き留めるのか、訳が解らない。  唖然としている僕を置き去りに、チッと舌を打った白根は、胤樹の怒りの火に油を注ぐ。 「どうせオヤジだっ。お前らみたいに若くねぇよっ。余裕もねぇよっ。こんなおっさん、飽きられても仕方ねぇんだよっ」  ん? んん?  ヤバい? ヤバイよね、これ。  ボルテージが上がっていく2人の言い合いに、僕だけが青褪めていく。

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