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第89話 ちぎりたい鎖 <説教> 14

 なんて、可愛い人なんだろう。  俺に、飽きられたから。  俺が、別の人を好きになったから。  白根さんの考えは、すべてが俺を中心に組み立てられていた。  お前は俺のものだろって。  お前の居場所は俺の隣だって。  我儘に、叫べばいいのに。  白根さんは、押し黙る。  足掻いてまで留まらせても、気持ちは離れ萎んでしまうコトを知っている。  知ってても、俺は訴えずにはいられなくて。  心がなくてもいいから、ここに居てと強情ってた。  白根さんの気持ちなんて、無視してた。  相手の幸せを願える貴方は、どこまでも深くて、どこまでも愛らしい。  愛おし過ぎて、もう一度、白根さんを抱き締めた。 「胤樹……弟と、約束したんです。2週間だけ、弟を優先してやるって」  好きで好きで堪らない白根さんの肩に顔を埋めながら、事の顛末を暴露する。 「会社でなら普通にしても、胤樹になんてバレないし、関係なかったんですけど……焦れて、欲しくて」  ぼそぼそと話す俺に、何を話し始めたのかと白根さんは空気を探る。 「焦れて……?」  不思議そうに紡がれる白根さんの声に、白状する。 「いつも素っ気なくて、クールだから、…俺を思って焦れてくれないかなって……」  俺だけが白根さんを好きな気がして、確かめたくなった。  白根さんには、俺が必要なんだと思わせて欲しかった。  でも。 「そんなのは、もういいです。試すようなことなんて……放置なんて、するもんじゃないですね。僕、壊れそうだし。するのも辛いけど、されんのはもっと辛い……」  ごめんね、白根さん。  謝っても、謝っても、足りない気がするけど。  やってしまったコトを、なかったコトになんて出来ないから。  離れていた時間を埋めるように、俺は白根さんに、きつく抱き着く。  白根さんを俺の色に染めたかった。  でも、やっぱり。  気づいたら、俺が貴方に、染まってた……。

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