3 / 27
第3話 妄想掻き立てる一枚
この土日、部活の練習があって、俺は学校に来ていた。夏休みには大会もあるし、けっこう忙しいんだよ。
なので、部活の間はレンのこともすっかり忘れていたんだけど、帰ろうとした時に思い出すきっかけを、男子メンバーから寄せられた。
「なあなあ、…コレって、なんか見たことねーか?」
って、スマホを取り出してきた。パット見、裸の写真だ。
一応、学校にスマホ持ち込みは禁止されてないし、俺達だってエッチな画像くらい見る。もちろん親にも学校にもナイショだけど。でもネットで検索したら、いくらでも出てくる。未成年フィルタなんてザルだから、見放題だというのはもうみんな知ってる。
だから俺達だって、また新しいのが出てきたか…程度に思った。んだが。
「なあ、コレ、どっかで見たことねぇか?」
と、もう一回聞いてくるので見てみると、
「…、えーと、レン、かな?まさか?」
その写真は、全身裸の後ろ姿で、どっかのベッドの上で寝転んでいる格好で、布団も枕もないシーツの上で、うつ伏せというか背中(つまりお尻も)を見せているんだけど、顔も伏せている。が、黒髪型や低い背格好や子供のような顔の輪郭から、
「レンみたいだなあ…。」
「やっぱり、そう思う?」
「これ、どっから出てきた?」
LINEの女の子から見せてもらったときに、あげるねと送ってきたという。
「他にも何枚か持ってたみたいだけどな。」
俺達だって着替えの時は、パンツまでびっしょりなんてこともあるから、全部脱ぎ捨てて着替えというのはよくある話。それを面白半分で写メ撮ることも、まあ、ある。
くらべてこの写真は、エロさがあるw。
「あのレンだったら、ちょっとイメージ変わるかな。」
「お地蔵さんみたいなキャラだと思ってたけど、見てないところでこんなこともするんだな。」
「ホテルだったらセックスしてるところか?」
「でもあいつの小さいから相手出来ないだろ。」
「どう見ても中学生小学生だもんレンって。」
「じゃこの写真はどんな時のだろ?」
「ヌードと分って撮ったのかな。」
「だから顔見せてないんだろ。」
ざわざわと更衣室に渦巻くこの空気感。
みんながこの一枚を覗き込んでいる。
「…だけど、」
俺が思ってることを、言ってみた。
「…これが、レンだという証拠はない。レンじゃないかもしれないな。」
一瞬、シン…という音が響いた後、
「…そうだよな。そうだよ。」
「てっきりレンだと思ってたけど、別人かもしれないし。」
と、堰を切ったようにぎこちない空気感に入れ替わった。
「ま、もう帰ろっか。」
そうしてその場はお開きになった。
帰り際、その写真を俺のスマホに送ってもらった。
家に帰る間に、その写真をじっくり、じっくり眺めた。
この真後ろからちょっと首を振り向き加減な角度の横顔、耳の形、うなじのライン、こりゃどう見たってレンじゃねぇか。
…エモいぞこれ。
ボッと顔が赤っくなるのを感じた。
これが裸の写真だからじゃない。レンだと思ったからだ。
…ん、いやいや、逆じゃね?なんか変だろ。
「あれ?蓮?部活帰り?」
レンの声がしてギョッと飛び跳ねた。
「ぅわっ?レン?どーしてここに?」
「あーあ、スマホ落としちゃって。割れたらどうすんの。」
と、飛び跳ねた表紙に飛んでったスマホを拾ってくれた。そしてあの画面を見られた。バッチリと。
「…あ、これ?」
ばっと取り返してすぐに仕舞う。なんかすげー恥ずかしくなって。
「あ、いや、バト部(バトミントン部の略)の奴らが見ててさ。なんかすげーエモくてさ。ちょっと見てたんだよな。アイツらこんな写メ送ってきてイタズラ好きっていうか」
「それ、僕だよ。」
「…、え?」
ともだちにシェアしよう!