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第15話 平常時に戻って

「あ、レン、おはよう…」 「おはよう」 夏休みが終わって、俺は、最近の気持ちを込めて、レンに伝えたくて、このおはようを言ってみたのだが、レンからは以前とほぼ同じ程度の軽い言葉が帰ってきた。いや、それがレンらしい、いつもの挨拶なんだけど。 この夏休みに、俺とレンはセックス経験をしたんだけど、結局夏休み中に3回経験した。いずれもレンの中に射精したんだけど。 それによって気持ちの変化というものが、俺には少なからずあった。 まず性欲というものが、とてもとても強くなった、ような気がする。現に、部活が始まる前には、後輩によって1回オナってから始めること(例の後輩がしゃぶってくれるという、アレ)が、ルーティーンになりつつある。 あれからだんだん、レンの身体が欲しくなってきた。あのセックスのときに見せた色っぽい顔が、いつも脳裏に出てきてて。ただそれが強くなるのはちょっと気がそびれるのもあって、だから後輩に鎮めてもらってるんだけど。 しかし。レンは。 相変わらずなのだ。 前々からそうだったんだけど、物事の執着というものがほとんどなく、クールという顔つきをしている。ついさっきもそうだったけど、会話はかわらずそっけないし。取り巻いていたハズの女子たちも、すっかり平穏無事にいつもの生活に戻りきっていた。 俺とのセックスのときは、やっぱりエッチになってる。そういう顔つきもするし、行為の最中の乱れようといったら(おっとこれ以上は俺の口じゃ言えねぇ)。 そのセックスが終わって暫くすると、今日の今みたいな、何事もなかったようなクールな顔つきに戻るのだ。 余韻というものって無いのかな?オンとオフがものすごくハッキリしてるといえば、そうなのかもしれないけど。 エッチの影響じゃないけど、普段の性欲もオフになってるんだろうか? 「じゃ、またね。」 授業が終わり、俺は部活に行くので、帰宅部のレンとはここで別れるのだが、その別れ方が、ホントにあっさりしていた。 いや、たしかに、夏休み前のレンと同じなんだけど。というか、俺が声掛けしてセックスまで経験したあのときの、その姿が最新情報で俺の記憶に残っているというのに、だ。いつもその前の状態に、戻ったような気がしてきた。 そうなると、俺とのセックスは、どういう感情でやってるんだろうかと疑問に思うこともある。え…、もしかして、俺がセックス下手なのか? 俺のこのレンに思う気持ちは?あのエッチなレンをまた見たくなっているこの気持ちは?どうすればいいの?レンはどう思ってるの? あ、いや、聞けばいいんだけどさ、いつもセックスした後だと忘れちゃうんだよな。だからいつも聞きそびれている。 「おっ、蓮くん。何を悩んでるのかな〜?(保健室の先生風に)」 ぎょっと振り返ると、例の腐女子がいた。 「あ、そっか、そっちも部活なんだ。」 実は写真部だというこの腐女子、最近は映画部と結託してイベントをやろうとしている発起人だということを知った。今日はその友達も連れて、二人で歩いていた。 「蓮くんたちって、可愛いと思っているけど、今日のその顔はなんだか浮かない顔つきよね。レンくんの、あの写真とか見てないの?」 「はぁ?見てないよ。なんだよそれ。…って、おい、その話…」 またあのレンのヌードとかの写真か?でも俺はそれ以上のセックスもやってるから、写真なんて必要もないんだけどさ。この前は動画も見せてもらったし。それよりその、友達の前で喋っていいこと? 「あ、そうなんだ。もうてっきり。…、え、あぁ、大丈夫よ。この子も内部のことは知ってるから。」 あ、そう…なんだ。…え?なんて言った?なんか証拠とか握ってるのかよ? と、腐女子はチラッと友達と目配せしたと思うと、 「見たい?レンくんの写真」 え?マジで、なんかあるのかよ? 「ここじゃ良くないから、写真部とか、…あ、いや、部活終わったあとの方がいいんじゃないかな。」 って、なんかもったいぶってるんだけど、なんなんだよ?見せられない秘密の写真か?  お互いの部活が終わった時間に、学校近くのコンビニで待ち合わせし、その駐車場の陰に隠れる場所で、俺達3人が固まっていた。 そこで腐女子のスマホを見せてもらった。女の子らしい、ピンクにデコってるケースが、目にチカチカしてくる。友達のスマホも、似たようなものだ。 「そうすりゃ、他人から見られることもないでしょ。カモフラージュしてんのよこれでも。」 そうして、画像とか映像とか見てみたが、フツーに健全な写真くらいしか出てこないじゃないか。レンの顔写真も見当たらない。 「このアプリから開いてみて。」 と指差した、ファイル操作のアプリみたいだけど。起動してみると、スマホの内部の見たこと無いファイル一覧がズラッと出てくる。 「この中で、フォルダの一文字目がドットのものがあるでしょ。今までのアプリだと、このままでは普通のファイルとしては認識されずに、表示してくれないの。なんのアプリでもいいんだけど、隠しファイルを表示できる機能があるもので、見ることが出来るのよ。」 と、「.photo」というフォルダを開いてみせた。その中の「ren」フォルダを開くと、いくつもの画像ファイルが出てきた。その1つを開いてみると、 「え?さっきはこんな画像無かったぞ。」 「こうすると、隠している画像が見られるのよ。パソコン経験者だったら、知ってて当然の機能なんだけどね。」 それは、レンの裸で、顔がばっちり写っているものだった。 他の画像を見ると、一緒にセックスしている人の姿やセックス中の写真、動画も撮っているものがあったが、どれもレンの顔がはっきり写っているものばかりだった。 「なに、これ、もらったのか?」 「ばか。違うわよ。ネットから落としてきた画像よ。動画もあるけど。」 ラブホテルの写真が多かったようだが、中には誰かの家のリビングで撮ったらしいものも含まれている。レンの痴態がいろいろ写っている。 「これ、レンはなんか言ってるのか?」 「さあ。私達からは、何も言ってないわよ。何も言えないし、なにか言ったところで問題が広がっちゃうし、何もできないのよね。」 この前のセックスしたときに見たものと、違うものがここにあった。ということは、レンが持っているものとは別のものが、広まっているということか。 「たしかに、レンだな。すげぇな。こんなプレイしてる。」 「蓮くん、考えてることが私達と同じよ。それじゃダメじゃないの。」 「そ、そう、だよな。ヌードがぼかし無しでみんなに見られてたら。」 「そうよ、もっと欲しいと思うわよね。」 「それも違うと思うけどな。」 「けど、私だったら、見るだけでいいかな。レンくんだったら、セックス相手じゃないって思っちゃうから。」 「なに、女の子みたいに可愛いからか?」 チンポが小さいからだろ、とは言わなかった。 「ま、そういうことかな。」 チンポが小さいからだな。俺も心が読めるようになってきたかな。 しかし、だ。 こうもレンのセックス画像が出てるのは、見知らぬ他人だったら、まぁいいだろ。関係ないんだから。 だけど俺みたいにセックスしていて、少なくとも好意を少しでも持ってるヤツからしてみれば、本人がどう思ってるか、疑問に感じるだろう。 ここはやっぱり、平常時で話を聞いてみるのが一番なんだろうな。 ちなみに、今はどうなんだろ?LINEで聞いてみるか。ええと、今ヒマ?レンの画像とか動画とかを聞きたいんだけど。こんな感じかな。ピロン。 じゃあ、と腐女子たちとも別れて、レンの返事待ちだ。 ピロン。 『知りたかったら、今から来れる?』 ピロン。ん?次は画像か。あれ?レンが縛られて犯されてる。 ピロン。 『いま、こんな感じで犯されてるところ。駅前のホテルにいるよ。いま一人?』 え?なんだこれ?なんだこの展開は?これはちょっと行ってみなければ。 ピロン。 『この子はいま犯されてるのに夢中だから、代理でメッセ送ってますw。一緒に犯してみる?』 なんだ?なんなんだこれは?あの写真に写ってたヤツか?カメラマン?こいつ誰だ?心臓がドキドキしてきた。歩くのが早くなってる。 ピロン。 『ホテルに着いたときに、部屋番号教える』 くそー、そのホテルまで、20分くらいかかりそうだ。 ピロン。 『君も蓮くんなんだね。だったら犯されてるとこ見られたいって言ってるぞ。こいつビッチだから一緒に犯してみるか?』 ピロン。あ、また動画だ。 『蓮くん?僕です。いま、常連のおじ…じゃないや、お兄さんたちに会ってるところです。もう3回中出しされたんだけど、まだ終わりません。朝までセックスしてます。あんっ、もっと欲しい、はぁ〜、もっと、もっと中に出してくだ』 ってところで動画が切れた。リアルで撮影されたものだな。もう走りながら見てたけど、あと10分くらい。 そして、…レンに会ったら、どうなる?どうする? そんなところに行って、俺は大丈夫なのか?大人が何人いるかはわからない。 そんなところに、俺が行って、いいのか、大丈夫なのか、何をされるのか。 …、えーい、いいや、とにかく、レンのところに行く。行ってから考える。

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