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第16話 レンの正体4
ピロン。
『部屋番号はこれです。8階の』
そのメッセージを頼りに、部屋の前まで来た。カチャッと音がして、ドアが少し空いた。チェーンロックがかかってるので、これしか開かない。
「蓮くん?」
小声でレンの声がした。俺も、大きい声は立てないようにして
「おい、レンか。どうした?なんでこんなところに?常連って?」
あ、レンのやつ、犯されてるのって本当だ。素っ裸だもん。
「僕ね、…あー、いま話する?それとも後にする?」
っていう提案をされたけど、ここまで来たんだ。今聞くしかねーだろ。
「じゃあ、危ないこと変なことはしないでね。このおじさ…じゃなく、おにーさんたちは、優しい人だから。危害は加えないでね。それを守ってくれたら、いまここを開けて、中に入ってください。イヤだったら明日か明後日に会って、話するよ。」
まあ、レンがそう言うなら、仕方ない。あ、それと、俺が来て良かったのか?
「僕のことが、ちょっと気になってきたんでしょ?このことは他の誰にも言ってないから、蓮くんだけが知ってることになるね。僕のことが、ここで少し解ると思う。…全部じゃないとは思うけど。」
部屋の奥の方で、影が少し動いた。数人いるみたいだ。こんなところで喧嘩起こしたら、俺も捕まるだろうし、一人で相手しても負けるだろう。
「じゃあさ、そこで服全部脱いでから入ってきて。」
「え?廊下で?」
「大丈夫だよ。僕、蓮くんの裸、見慣れてるもん。」
「そうじゃないだろ。俺の問題だ。」
あーもー仕方ない。ここまで来たんだ。制服を脱いで、シャツとボクサーも一気に脱いだ。ここってカメラとかあるんじゃないのか?一応、廊下にカメラらしきものは…あの天井にあるのって、そうなんじゃないのか?おい?
ドアが閉まりかけて、今度は全部開いた。全裸のレンが出迎えてくれた。
「蓮くん、よかった。来てくれて。」
と、廊下で抱きついてきた。ちょっと汗ばんで熱い体。ついさっきまでセックスしてたんだろう。
「おいおい。じゃ、まず入ろう。廊下はマズイんだろ?」
と、脱ぎ捨てた服をレンと一緒に拾い上げ、すぐに部屋に入った。
中には大人の人が4人来ていた。うん、これじゃ勝ち目はない。最初から諦めていて正解だったな。
「君がもう一人の蓮くんかい?噂通り、ハンサムだね。」
噂?ハンサム?昭和かw。
「こっちのレンくんが、君のこと好きらしくってさ。オジサン妬けちゃうな。でもまさかホントに来てくれるなんて思ってなかったから。」
「レンくんのセックス、見てみるのかな。ああ、動画見せたって言ってたから、もう知ってるのか。じゃあ、リアルで見てみたいかい?」
「ホントは、レンくんと蓮くんで絡んでくれると、動画撮りがいがあるんだけどなあ。あ、もちろん、一般公開しないから安心して。」
おっさんたちがせきを切ったように話しかけてきて、
「ちょ、っちょっ、ちょっと待って。なに?これ?どうなってるの?」
ずっと抱きついているレンが、頭だけこっち向いた。
「ごめんね。僕がセックスしてる時に、おにーさんたちが蓮くんにLINEしちゃったみたいで。こっち向かってるっていうから仕方なく。それで、どうする?これから、ヤる?」
はぁ?このおっさんの前で?犯されてたレンを?なんだそりゃ?
「あの、わりぃ、そういう気分じゃないんだけど。」
とりあえず、これを言うくらいしか思いつかなかった。
「そうだよね。ごめんね。じゃ、今日はこれで帰ろ。」
と、おっさんたちに謝って、ここでお開きにするってことになった。
「またメールするから。ごめんなさい。」
と、みんなに向かって、頭を下げた。
「いいよいいよ。俺達が勝手なことしたんだから。」
「でも、また会おうな。今日の続きしようよ。」
「やっぱり、レンくんっていい子だな。今日は悪かったね。」
「はい、すみません。それでは。」
ぱたん。ドアを締めて、さっさと建物から出た。
夜風が、さぁーっと顔を通り過ぎていく。
二人とも、しばらく無言のまま歩いていた。…いつだったか、同じようなことをしてた記憶があるなあ。
「…レン、今日の、あのおっさんたちって、なんだったんだ?」
なんだか、この瞬間が、怒りも呆れも通り越している感じがして、ひとまわりして平常心に近くなってる。自分の中でも、驚くくらいに、落ち着いていた。
「あの人たちはね…、…僕のことを変えてくれた人…っていうのかな。」
「はい?」
…、俺は、次の言葉を待っていた、のかもしれない。まだなにか言いたいような気がした。
「…僕ね、…中学から…小学生のころから、…他の人と目を合わせられなくて、話をするのが怖くなって、学校ってあんまり行ってなかった…んだよね。だけど勉強は面白かったから、プリントとか宿題とかやってたから、なんとか追いついていたけど。
…、なんか、学校に行ってもやることがなくって、そのままこの歳になっちゃったけど。」
…、俺は、そのまま、黙って聞いていた。
「高校になって、最初に声をかけてくれたのが、蓮だった。おんなじ名前だって。あの時、僕、今でも覚えてる。ドキッとした。それで、『あーここは大丈夫かな』って思った。」
ふむふむ。俺はあんまりそこまで覚えてないけど。
「そうして、登下校の時に、蓮くんみたいな感じの人が裸で出てる、AVのDVDがあるのを、ちょっと見てたんだよね。あ、いろんなエッチな本がある本屋さんに行くことがあって。その時に、…その時に、今のと違うオジサンに声をかけられて。」
はぁ?
「そのオジサンの家に連れられて、ヌード撮らされたり動画撮られたり、そのうち男の人とキスしたりセックスしたりするのも、写真や動画で撮られるようになって。」
おいおいおい。
「他の人とセックスしてみるかって、去年の夏休みに旅行連れられて、色んな人とセックスしてきちゃったんだ。その誰もが、僕に優しいこと言ってくれて。あ、たまにヤバイことしたら怒られたりもしたけど。…でもそれが…嬉しくなって、その…、みんなにも気持ちよくなってもらうことで、お返しというか、そういうことが出来たらいいかなって。」
えーと、たぶん、そこは、考えてる方向は間違ってると思うぞ。
「今はね、オジサンもそうだけど、蓮くんに、僕の中に思いっきり中出ししてくれるとき、あれが、すっごい気持ちいいんだ。蓮くんも、体ギュッとして、すごい出してくれるから、あれが一番幸せ。あの時は、僕がいて良かったって思うんだ。蓮くんのために、僕がしてあげることがあって、蓮くんが幸せになれたら、それが一番幸せ。」
なんか、なんとなく、前に誰かから聞いたことがあったような気がしてるぞ。デジャヴかな?
「でも蓮くんにいつもお願いするわけにもいかないし、オジサンたちもまだまだいっぱい人数いるから、少しでも相手できればと思って、毎週週末はオジサンたちに会ってるんだ。全部中に出してくれるから、僕も気持ちいいんだよね。」
わかった。あのおっさん連中は、レンを洗脳したんだ。そういうことか。納得。
「だから、僕が元気でいるのも、蓮とこうやって話しできるのも、オジサンたちがいろいろしてくれたお陰でもあるんだ。だから、オジサンたちに変なことしないでね。ね、お願い。」
手をとって、じっと見つめてくる。じっと。じーっと。…上目遣いのこの可愛い顔に、俺のほうが恥ずかしくなって、視線を逸しちまった。
「わ、わかったよ…、うん、…」
レンには、逆らえないなあ。可愛いなこいつ。頭をポンポンと軽く叩いてやった。
「…、うん…」
頭を、俺の胸に、ぽすっとくっつけた。腕が背中を回り、ぎゅっと抱いてきた。
「ん?どうした?」
「…ごめん、…ちょっと、このままで…」
ふーっ、すーっと、大きく息をしている。
「…なんか、k、き、緊張して…。」
ここまでのセリフ、ずいぶん間が空いたり言葉を噛んでいたけど、要約してまとめた文章をだしていました。これ全部話すのに、ホントは20分以上かかってたんだよ。
このあたり、いつだか学校の食堂で起こったような、思考回路が真っ白になって止まった時に似ていた。前に聞いていたけど、腐女子のあの子が指摘していたこと。予期せぬことを質問された時、こういうことが起こるって言ってた。それでも、20分かかったけど、全部言えるようになったのは、やっぱりレンは変わってきているのかな?と、ちょっと感じたところだった。
「こうやって、少しずつ、人間って成長していくんだよ。そうだと思うな。」
レンは、俺の言葉に、返事はしなかったが、頭をこくんと頷いていた。
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