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第23話 連休明けの教室
腐女子が、学校から離れていく方向に歩いているのを見た…と、クラスの他の人が言っていた。
道理で、朝には来ているはずのあの子が来ていなかった。
連休明けの初日、学校の中は、フツーに始まった。
この連休、俺はバトミントンの大会があって、個人で2位、団体で3位と、賞状やトロフィーも手にしてきた。もちろん、その日に顧問が学校に提出していたけどな。
その感激だった体の震えが、今でも、まだ残っている。
「蓮、寒いの?震えてるよ?」
レンは俺に話しかける。久しぶりに会うレンにも、ひと目見たときから、なんだか、変にゾクッと来てて、その震えもあったのだ。
「なんだろうなぁ?武者震いってヤツかなあ?」
今朝は、レンが俺ん家の近くまで来ていて、俺が家に出て少ししてバッタリ会ったのだ。俺と一緒に学校に行こうって言い出したのだ。だから、いつもは学校に直接行くのを、俺の家を経由して来ていたのだ。
「蓮に早く会いたくてさ。」
連休のあいだ、ずっと会えずじまいだったし、俺の大会のこともレンは知ってたし、登校時はそのいろんなことを話した。
話はしたんだけど、その俺が喋ってる間もずっと、うん、うん、と、少し嬉しそうに俺の話を聞いている。
そこはやっぱり、普段のレンと変わりない。俺の熱い語りにも動じず、以前の暗い語りかけをしたときがあったんだけど、それともさほど変わらないアクションで聞いているのだ。
「それで?レンはこの連休にどうしてた?旅行に行ったんだろ?」
と、質問してみた。
「あ、うん。少し日焼けしたかも。キャンプに行ってたんだ。」
あ、そうなんだ。そう言われてみれば、前より肌が黒くなったかも。
「そうか、前はすごい白かったもんな。そうだそうだ、ちょっと褐色っぽくなってる。おぉー、すげーな。だからかあ。なんか違う雰囲気に見えたんだよな。その、なんていうか、」
『エロい、エモい』
耳元でそっと囁いた。
「…っ、ば。ばかっ。」
すげー驚いた顔をして、顔を真っ赤にしていた。
「蓮からそんなこと言われるなんて…恥ずかしい…」
お?おぉっ??普段の仏頂面から一転。こんな顔、セックスの時以来だぞ。なんだか、ゾクゾクって体が震えてきたw。
…パタパタパタ…ガラッ
と、腐女子が入ってきた。そして始業のチャイムが。
「…あ、いた…」
急いで席に付き、すぐあとから1時限目の先生が入ってきた。
「レンくん、どこ行ってたのよ?」
先生がもう入ってきてるので、小さな声でレンに話しかけるのを見た。
「今朝は、蓮と一緒に来たんだよ。」
「そっか、はぁ〜、ねえねえあとで、ちょっと話があるんだけど、いい?」
「なに?なんかあるの?」
「ほら、そこ。授業始めるぞ。」
教壇の真ん前の席なので、先生の真正面にレンの席があるのだ。これは目立ってしょうがない。腐女子はその斜め後ろ。手が届く範囲なのだが、位置が位置だけに、授業中はマズイ。
「あ、すみません…。」
「じゃ、今日は積分の、面積の求め方だな。こうグラフがあって、x軸のこの点から…」
と黒板にスラスラグラフを書き始めた。俺の席は少し後ろだが、前の方で腐女子がレンにちょっかい出して、話を聞き出そうとしているみたいだ。
「瀬川?どうした?」
背後に聞こえるコソコソ話が聞こえて、先生が振り返った。
「あ、いえ、すみません…」
「…、今日はなんかあったのか?瀬川らしくないぞ。」
忘れてる読者のために。瀬川というのは、写真部の腐女子の、正式名です。
授業中にコソコソ動いてたり物音立てているのを、さすがの先生も気になっていたようだ。
そうして授業がもう終わるというタイミングで、
「えーと、津田。授業終わったから、ちょっと先生と来てくれ。すまんな。」
「え?」と、腐女子。
「え?はい。」
津田というのは、レンの名字です。たぶん、いま、初めて発表されました。隠してたわけじゃないんだけどね。
それより気になったのは、腐女子の方が返事が早かったことだ。なんで腐女子が返事してるんだ?それに、腐女子の方が固まってるけど?
「なあなあ?」
ちょっと気になったので、腐女子に声を掛けてみた。そっと言ったつもりだったけど、ビクッとして振り返っていた。
「…なあ、何があったんだよ?」
「…うん、いや、なんでもな」
「なんでも無い訳は、無いと思うんだけど?」
俺はしゃがんで、腐女子と目線の高さを同じにしてみた。素のままで、ふざけた感じはまったくない。普段だったら、(なんとか風に)演じてセリフを言ってくるところなのに。
「…いや、蓮くんにも…、…じゃあ…、あとで相談したいことがあるの。お昼でいい?」
いつになく真剣に話してくるので、
「お?ぉ、おう。昼だな。」
次の授業のベルが鳴ろうとしてるので、俺は席に着いた。
レンは、2時限目、3時限目、そして4時限目と、戻ってこなかった。
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