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第24話 連休明けの学校
「マズイわねこれ…」
瀬川文子(あやこ)です。いま、例の画像SNSを見たんだけど、レンくんの画像がバッチリ写ってたのを見たの。
しかも、体にいろんな落書きが書いてあるし、束縛の日焼け跡まで付けられて、それがにこやかに笑ってるなんて。
「いいねとかハートとか、もういっぱい足跡ついてるし。そんなにいいのかしら…?」
cuteとかcoolboyとか、海外の書き込みもいっぱいあるけど、こんなに晒されてたら、流石にマズイんじゃないかしら…
写真部の撮影旅行から戻ってきて、いつもの画像チェックをしていたところ。あ、これはネットに挙がっている画像の方ですよ。この件については、個人的にも緊急事態だから、写真部の方は後回し。
そうしてSNSの画像をずっと閲覧していて、この時にレンくんのこの画像が見えた。もっとも、私に『レンくんの画像が載ってる』と連絡をもらって確認したところだったんだけど。あ、こちらも、同じ写真部の女子です。あの子は単純にレンくんが好きだから見てるんだけど。パソコンの男の裸画像が、他にもいっぱい持ってるみたいだけど『写真の参考として。勉強材料よ!』と強く念を押されてる。まあそこは私もキライじゃないから。
「一応、管理者に削除申請は出したから、もう今は消されてるんだけどね。そこは確認した。だけど本人のアカウントじゃないから、たぶん一緒に居た大人の投稿でしょうね。大元の画像は、たぶんレンくん本人も持ってないんじゃないかしら。」
もう深夜になってしまったけど、その子とチャットで状況報告をしている。LINEテレビ電話機能を使って、スマホとパソコン画面を映しながら話をしている。
「一応、アカウントも込みでスクショ(スクリーンショット、画面をそのまま画像保存する機能です)したから、証拠として持っておくわ。」
あの子は、そのアカウントと友達申請して、詳しく調べてみるって言ってるから、
「危険だから止めといたら?」
と、忠告はしておいた。たぶん、もっと他の画像が欲しいだけなのかもしれないけどね。
それよりも、気になっていたことがある。学校にバレちゃうんじゃないか、ということ。
写真部の顧問に、以前相談したことがあったから、レンくんについての画像流出は、事態は知っている。だから今回ももしかしたら知ることになるかもしれない。
「レンくんのこの写真、学校に知られたらどうなると思う?」
一応、あの子にも聞いてみた。
『今回で3回目?4回目?だもんね。もう流石に口止めは利かないんじゃないかしら?』
「やっぱり、そう思うでしょ。このままだと退学になっちゃうわよ。」
『それは困るわね。あのレンくんのナマの姿が見られなくなっちゃうのは…』
「画像の方は今後も挙がるのかしら?」
『レンくんは関係なく、挙げる大人がいるんだったら、今後も挙がるんでしょうねえ。』
「そういう大人に、挙げないでって言えないかしら?」
『無理じゃない?その人にとって、悪いことと思ってないんでしょ?言うだけ無駄でしょ。レンくんだけが負い目を負わされるだけになっちゃうわよねえ。』
「明日、学校でしょ?レンくんどうなるかしら?」
『バレたら退学…、問い詰められるわよねえ。どうすれば良いのかしら…』
「とりあえず、朝に学校に行かないように説得してみるかなぁ。」
『でもそんなこと出来るの?』
「とにかく、行かせなきゃ、なんとかなるんじゃないかしら?学校に行かないように、引き止めておくか。」
『でも私、連絡先知らないから。アヤ(アヤコの名前は私のことですね)は知ってるの?』
「私も知らない…。でも家の場所は知ってるから、朝早く行って引き止…」
『なんで知ってるのよ!教えてよ。アヤって意外と抜け目無いわねえ。独り占めしちゃダメよっ。』
「ちょっと、そこに食いつかないでよ。とにかく、家に出るところを捕まえておくわ。」
『まぁ…、じゃ、レンくんの家に行くのは許してあげるわよ。今度教えてよ。私もレンくんの家に張り付いていくから。』
「あんたに教えると、パパラッチになるでしょ。ストーカーになってほしくないから言わないだけよ。」
『アヤって、もうちょっと他人を信用してよ。私もそこまでしつこくはないわよ。』
まあ、今日はこのくらいにしとくか。明日は早いんだし。早く寝ておくか。
「あら、瀬川さんね。レンって、もう出かけたんですよ。今日は早く行くって、すごい嬉しそうだったから。」
がーん!
せっかくレンくんの家まで来れたっていうのに、いつもより30分も早く来たっていうのに、それよりも早く出たなんて。
「連休中は、あちらの蓮くんのことをしきりに話ししてて、すごい会いたくなったみたいで。もう起きたときからそわそわしてたのよ。最近こういうこと多くなってて、すごい学校に行くのが嬉しいみたいで。瀬川さんもありがとう。レンのこともよろしくお願いしますね。」
なんてすごい丁寧に話ししてくるお母さんに対して、あしらうことも出来ずに頭を頷くだけだったけど。
「わ、わかりました。それじゃ、もう学校に向かってるんですね。それじゃ失礼します。」
「あ、連くんと一緒に行くって行ってたから、そっちの家に行ってると思うわよ。」
「え?そっち?」
マズイわねー、蓮くんの家は知らないのよね〜。とりあえず、そっちの方に行ってみるかぁ。
結局、直接学校に向かって走れば良かったのか。変な回り道したもんだから、始業開始ギリギリまで、ずっと走ることになって。レンくんに全然話聞けないうちに、先生に連れてかれちゃった…。
「なあなあ、腐女子、なんかあったのか?今日はずいぶん落ち着きがないなあ。」
何も知らない蓮くんに、このレンくんの写真を見せるかどうか、あ、いや、こんな話をしていいのかどうか、それを考える余裕も無くなっていた。どうしよう…、どうしよう……
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