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ひとしずくの海 -短編集- 祖母と孫(1) 『向日葵とりんご飴』より | 硯 羽未の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
ひとしずくの海 -短編集-
祖母と孫(1) 『向日葵とりんご飴』より
作者:
硯 羽未
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祖母と孫(1) 『向日葵とりんご飴』より
音緒
(
ねお
)
が子ども向けアニメにはまっている。 何が楽しいのか
初音
(
はつね
)
にはわからない。自分とは血の繋がらない、けれど孫のような存在の音緒は、元・娘婿の息子だ。もうすぐ小学校に上がる。 その音緒が、デッサンの狂った妙なアニメにはまっている。 「音緒、テレビ消していいかい。ご飯食べてしまってからになさい」 「……はぁい」 しょんぼり具合があまりにも不憫で、初音は心が揺らぐ。 今ここには彼の両親はおらず、一緒に暮らしているはずの腹違いの兄・
眞玄
(
まくろ
)
も出かけていて不在だった。初音と二人きりで、寂しいのだろうと思う。 (けどねえ……どうにも騒がしくって) 子供向けのアニメは、初音には騒々し過ぎた。 何か他に興味を向けたいところだが……と考えていたら、しんとした食卓で、ぽつんと音緒が言った。 「あのねーばあちゃん、今日ね、保育園でコウくんが言ってたんだけどねー」 「うん、なんだい」 実の祖母ではないが、音緒は兄に倣って初音を「ばあちゃん」と呼ぶ。傍からは本当の祖母と孫に見えるかもしれない。 「バイオリンやってるんだって。バイオリンてなに?」 なに、と問われれば、一言で言えば弦楽器だが、子供にそれがわかるかどうか、初音には不明だった。 「うーん。……ああほら、アタシは三味線をやっているだろう。あれは弦楽器の一種でね。バイオリンも、大雑把に言えば仲間になるかね」 「三味線てパパもやってるよね。あとあと眞玄も」 「そうだねえ。二人ともアタシが教えたのさ」 「ふーん……すごいねえばあちゃん」 音緒は何か言いたそうにしながらも、また黙々と食事を口に入れるのを再開した。 「……音緒?」 やりたいのだろうか。 やりたいならやりたいと言えば、教えるのに。けれど何を遠慮しているのか、音緒は一向に自分からはその言葉を発しなかった。
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