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祖母と孫(2)
(引っ込み思案なのかね……)
それとも、コウくんとやらがやっているバイオリンに興味があるのだろうか。保育園の友達がやっている楽器を共有出来たら、それはそれで話題が広がるというものだった。
初音は軽くため息をついた。
「音緒、三味線やりたいってんなら、教えるよ?」
「――でも僕」
「違ったかい?」
「ちがくないけど。だってばあちゃん忙しいでしょう?」
引っ込み思案と言うより、単に初音を慮 っているのだろうか。まだ年長さんなのだから、もっと我を出しても良さそうなものだが、居候という立場を幼いながらに理解しているのかもしれない。
「音緒。言っておくけどねえ、おまえはアタシとは確かに血の繋がりはない。言ってみれば赤の他人だ。でも、おまえのパパはアタシの息子も同然だし、その息子の音緒は、やっぱり眞玄と同じ、孫みたいなもんなんだよ」
「赤の他人てなに」
「……まあそれは今はいいから。だからねえ、やりたいことがあるんなら、遠慮なく言ってごらん」
小さい子の「これはなに」「これはどういう意味」という攻撃が正直あまり得意ではない初音は、少しばかり質問に対する解答を端折ってしまったが、伝えたいことは音緒にもわかったらしい。
「三味線、やってみたい」
「ああいいよ。明日からでも見てあげるよ。他には何かあるかい」
「……テレビ見たい」
おまけのように付け加えた素直な科白に、初音は思わず苦笑した。
「じゃあ、ちゃっちゃとお皿の中身を食べておしまいよ。そしたら見ていいよ」
仕舞ってある子供用の三味線を出して手入れしないとねえ、と呟いて、音緒が食べ終わったのを見計らってテレビをつけてあげた。
その内容はやはり騒々しくて、初音は軽く眩暈を覚えた。
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