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うさぎの視界(1)  『セルリアンブルー』より

 ユイのお部屋の外にはもうひとつお部屋があって、扉を開けるとそこもユイのお部屋になるのです。  ユイの旦那さんは光だけど、抱っこされるのは好きじゃありません。傍にくっついてべたべたまとわりついたり、光の周りをくるくる回るのが楽しいのです。  光はどこかユイに対して遠慮があって、普段は無理に抱っこしたりはしません。ユイが嫌がって逃げ出すと、すぐに諦めてしまう。それでも最近は、柴田くんに負けたくないのか、ユイを抱っこしようとするのです。ほんのたまに、だけど。  柴田くんは、ユイのことを遠慮なく抱っこしてしまいます。  ひょいって持ち上げて、あっさり手中に収めてしまうのです。  柴田くんの大きな手。光と違ってすごく逞しい柴田くんは、だけど力の加減は忘れません。強引だけど優しい手なのです。  ひっくり返されると、抵抗とかするのを考えられなくなって、ユイはうまく動けません。  白いおなかを出して柴田くんの手の中にいると、いつも光がなんだか目をうるうるさせてユイをじっと見ています。  ……ひかる、光、泣かないで。  どうしてそんなに涙をためた目でユイを見るの?  柴田くんの膝の上で仰向けになりながら、抵抗も出来ずに光の顔をじっと観察します。柴田くんが、泣き出しそうな光を見て、 「もういいかあ?」  と呆れ顔で呟きました。  光はちょっと残念そうにしぶしぶ頷いて、やっとユイは毛足の短いラグの上に下ろされました。ぷるんと身震いしたら、ユイのチャームポイントその1である肉垂がたわわに揺れます。 「…………か、」  光が、か、で一旦止まってから、大きなため息をつきました。 「かんわいいいい……ねー可愛いよねえユイの仰向け。はぁ」 「泣くほどか。ほら、ティッシュ」  柴田くんが苦笑して、ユイが引っ張り出して遊ばないようにひっくり返してあったティッシュの箱を光に渡します。 「ねえ柴田ぁー、なんでそんなに上手に抱っこ出来るんだよ? うさぎと暮らしたこともないのにさあ。ずるいよ」 「さあ」

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