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うさぎの視界(2)

 もふもふのユイを抱っこしたあとの柴田くんのシャツには、白い毛がいっぱいくっついていて、光がそれをコロコロできれいにしました。ユイは茶色と白のブロークンですが、白い抜け毛のが目立ちます。 「いいなあ、僕も抱っこしたい。柴田みたいにしてみたいよー……」 「恐る恐るやってちゃ駄目なんじゃん? ほら、こういうのは勢いでさ」 「勢いったって、……嫌がられると怯むっていうか」 「抱いてやるぜ! ってな感じでがっつり行かないと、抵抗されて逃亡されんのがオチじゃないか」  何を話しているのか、ユイにはよくわかりません。良くない相談をしているのかもしれません。光はラグの上を跳ね回っているユイのことを見つめ、また、ため息をつきました。 「そう言われてもなあ……」  光の手がユイに伸びました。  するん、とその手をかわして、ユイは光の足元をくるくると回ります。  ……この瞬間が、楽しいの。  抱っこなんかされなくても、ユイと光の間には愛があるの。それをわかってもらえたら、ユイは嬉しいのです。  ね、光。  そんなことに意味はないのよ。 「あー、逃げられたなあ」  にやにや笑ってる柴田くんは、面白そうに光を揶揄していますが、意外とその目は馬鹿にしているわけでもなくてやわらかいのをユイは知っています。  光がユイに向ける視線に、どこか似ているのです。  ついでに柴田くんの足元にもまとわりついてあげることにしました。 「ユイぃ……なんでそんなに柴田になついて……」  嫉妬を含んだ光の声は、ユイの垂れた耳には入りません。  ふたりでユイを可愛がってくれたら、それでいいのです。ずっとずっと仲良しでいれたら良いねと願っているけれど、光にユイの気持ちが届いているかどうかは、ユイにもわかりません。  言葉も鳴き声もないうさぎだけど、傍にいられるだけで幸せなのです。それは多分、光も同じだと信じたい。  ……ただ、抱っこはあんまり。

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