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3月14日の二人
今日は3月14日。
丁度一ヶ月前のバレンタインデーに、同じ部活の人たちに友チョコと称して手作りのトリュフを配った。
大多数は本当に友チョコなのだが、一人だけ本命がいる。けれど差別化をはかることが出来ず、その他大勢の中に紛れ込ませてしまったのを、今になって後悔していた。
特に期待感も何もない、ただの3月14日。どきどきもわくわくも存在しない。始まってすらいないのだから当然だ。
部室に向かい、与えれた自分のロッカーに荷物を置く。バレンタインのお返しがこっそり入っている訳でもなく、置きっぱなしの私物がいつものようにあるだけだ。
「乙!」
背後から声がした。
振り向くと本命である同級生がにこやかに立っていた。その手には可愛らしくラッピングされた小さな箱がある。
「これ」
え、まさかくれるのかと気持ちが浮き足立つ。
「さっき貰った」
「──お返し?」
「うん、あげたから」
ああ、そう。良かったね。くれるわけがない。期待するのが間違いだ。
「でも、あげたのって友チョコなんだよね。だから少し困った」
「ふうん……」
「君も友チョコくれたよね、そういや」
「まあね、友達として」
「……じゃ、これはいらない?」
同級生はちょっと神妙な顔で、リュックから別の包みを取り出した。
「本気のお返しなんだけど」
「──」
可愛いかよ。
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