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アジフライはからりと揚げて

 俺の行き着けの店『ちろり庵』は、手拭いを頭に巻いた甚平姿の親父が一人で切り盛りしていて、落ち着いた雰囲気が好きだ。 「アジフライ定食あります?」 「いらっしゃい。今日は一人かい」 「待ち合わせですよ。もうすぐ来るはず」  約束の時間には少し早かった。  薄暗い店内でアジフライ定食を待つ間、先にお願いした八女抹茶を口に含む。美しい緑色をした抹茶が口に広がり、渇いた俺を潤した。 「はー……生き返る」 「仕事お疲れ様。はい、アジフライ定食お待ちどう」  目の前に置かれた二尾のアジフライと千切りのキャベツと添え物、五穀米の盛られた茶碗。  からりと揚がったアジフライは俺の胃を刺激したが、待ち人がまだやってこない。先に食べて待っていようか悩んでいたら、出入口の重い扉がちりりんと音を立てて開いた。 「遅くなったー、悪い!」 「ああ……三分遅刻だ。何を頼む」 「おっ、アジフライうまそうじゃん! 俺も同じの頼むわ」  注文を入れようとしたら、奥から庵主が申し訳なさそうに謝罪した。 「アジフライはそれで最後なんだよ、すまないね」 「──えっ、……じゃあ、えーと」  メニューを睨んでいる連れの前に、俺はアジフライの一尾を乗せた取り皿を置いた。 「注文来るまで、それ食ってろ」 「えぇ~っ、いいのおー」  大袈裟に喜んだ連れは、別のメニューを待つ間、俺がやったアジフライを旨そうにつついている。 「おまえのもなんか寄越せよな」 「おけおけ、体で払うわ」 「はぁ? おかずを寄越せって」 「うーん、イケズ。欲しいくせにぃ」  訳のわからないことを言って軽く笑っている連れに、ため息が出た。

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