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2 ダメなのに

 学校ではいつも通り委員会活動に精を出し、佑哉も、勉強に仕事に忙しい。  でも、夜になったらふたりきりの時間だ。  元々ベタベタしたがる佑哉だから、もう、それはそれは甘ったるいものになる。 「先輩、キス慣れないですね。すぐ真っ赤になる。可愛い」 「分かってやってるなら、もうちょっと……」 「もうちょっと、何?」 「そ、の……、こんな、ひざに乗っかってとか、恥ずかしくて」 「だってこの方が抱きしめやすいんだもん」  佑哉は言いながら、僕のTシャツの背中側にするりと手を入れた。 「ひゃっ」  最近、この手のイタズラが多い。  びっくり半分、ドキドキ半分。  でも、僕だって普通に健康な男だから、そういう系の刺激には、ちょっと反応してしまう。  それに、そんなに流されやすい性格だったかと自分であきれるほど、日に日に好きになっている自覚もあるし――もちろん、直接『好き』とかは言ったことがないけれど。  Tシャツの中の手が、ゆっくりじんわり、背中のあちこちを()いだす。 「……、ん」 「そんな悩ましげな声出さないでくださいよ」 「じゃあそれやめて」 「嫌です」  手がお腹側に来て、さりげなくTシャツがめくられる。  僕の体をまじまじと見た佑哉は、目を伏せて軽くため息をついた。 「小柄で可愛い顔した先輩。しかもおいしそうなんて」 「え、え? 何?」 「痛いこととか嫌なこととか絶対にしないんで、先輩のこと気持ちよくしてもいいですか?」  驚きのあまり、目を見開く。  こくこくとうなずいてはみたものの、一体何が起きるのか。  佑哉は僕をベッドに寝かせ、Tシャツをめくって、上半身のあちこちにキスしてきた。 「ん、くすぐったい」 「くすぐったいところは性感帯ですよ」  直接的な言葉で言われて、ぶわっと恥ずかしくなる。  佑哉は……徐々に、期待する場所の近くを中心に唇をくっつけていき、俺のことをちょこっと上目遣いで見た。 「ここ、なめてみてもいいですか?」  乳首のすぐ近くに、唇を寄せる。  あの日見た妄想を思い出し、緊張気味にうなずく。  佑哉は舌を出して、ほんの先っぽで、チロッとなめた。  体が自然に、ぴくっと跳ねる。 「ん……っ」 「気持ちいい?」  チロチロとなめながら、空いた片手で反対側をいじる。  免疫のない僕は、それだけでかなり興奮してしまった。  呼吸が荒いのが、自分でも分かる。 「は、ぁ……、変な声出ちゃう、んんっ」 「頑張って抑えて」 「……ん、んっ、……ん」  ちゅうちゅうと吸われて、下は勃起している――佑哉は気づいているだろうか。 「先輩、こっちも触っていいですか?」  ハーフパンツの上から、太もものあたりを、やわやわとなでる。  僕はもどかしくて、か細い声で「触って」とお願いしてしまった。  下着ごとずり下ろされる。  ブルンと飛び出したものを見て、佑哉が生つばを飲み込んだのが分かった。  ここを見せてしまったらいよいよ、これはただのじゃれあいじゃなくて、性行為だなと思った。  佑哉と、(みだ)らなこと……。 「先輩、我慢汁でてきた」 「そういうの、言わなくていいから……っ」 「なんで? うれしいですよ、期待してくれてるんだなあって」  佑哉は愛しそうな顔つきで、僕のものをそっと握った。 「俺ばっかり好きなんじゃないか、押し付けてるんじゃないかって、不安だったりするんですよ。これでも」 「あ……ぁ、」  何か言いたいのに、感触で言葉が飛んでしまう。  人にしごかれると、こんなに気持ちいいのか。  かろうじて冷静な自分が時計を見ると、まもなく21:40というところ。  まだみんな、廊下を普通にうろついている時間だ。  ダメなのに。 「ん、はぁっ、や、……声でちゃ、ぅ」 「じゃあふさいであげます」 「んぅ」  キス、というより、人工呼吸に近いようなふさぎ方で、声がくぐもる。  すぐイッてしまいそうで、泣きたくなった。 「ん、んぐ……」  僕の状況を知ってか知らずか、佑哉はさらにしっかり僕の口をふさぎ、下を攻めた。  体がびくびくと跳ねて、自分のものじゃないみたいだ。  イキたくて、脚に力が入る。 「もうイキたい?」  かすれ声で聞かれて、僕は泣きそうになりながらうなずいた。 「可愛くイッてください」  かわいくってなんだ……と思う暇もなく、熱が下腹部に集まる。 「ん、ゃだ、……っ、ん、んッ」 「大丈夫」 「……ッ、ん、イク、ん……っ、はぁっ、はあっ……、ッ……!……!」  長い長い絶頂の中、佑哉の手にも、僕のお腹にも、熱い精液が飛んだ。

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