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 翌日、生徒会月報が届いた。  そして、教室で盛大にむせた。 <夏休み明けをめどに、校則の見直し提起します。風紀委員長の佐久間広夢くんを中心に意見交換を行い、以下の校則について改善を求める予定です>  交際禁止の項目の隣にわざわざふきだしで、『高校時代から10年付き合ったいとこが結婚予定です。幸せそうです』と書かれている。  大嘘を言ったのは悪かったけれど、幸せそうだなんて一言も言っていない。  とんだ奴だと生徒会長を恨みかけたところで、スマホが震えた。  授業前だからOK。  チラッと見ると、佑哉からさらっと1行。 [先輩大好き] 「ゲホッ、ゴホッ」 「え、佐久間くん大丈夫?」 「う……、だいじょ、ゴホ」  隣の女子に無駄に心配されて、ただただ気まずかった。 「せーんぱい、おかえりなさい」 「……きょうはバイトないんだっけ」  あいさつもできず、目も合わせられず。  恥ずかしくて消えたくなりながら、自分の机に鞄を置いて、そのままベッドにもぐ……ろうとして、抱きとめられた。 「あれってやっぱり、俺のために校則変えようとしてくれてるんですか?」 「違う。偶然。目安箱に入ってた意見の中に、交際禁止を撤廃して欲しいって……」 「わざわざ架空のいとこまで出してー?」 「う」  なぜ嘘だとバレたのかは分からない、もしかしたらカマをかけられただけかも知れないけれど……とにかく僕は、ブランケットをかぶった。 「何? からかいたいの?」 「違いますよ。本当になんかもう、先輩が愛しくなっちゃって。早く抱きしめたいばっかり思ってました」 「授業ちゃんと聞いてた?」 「もちろん。バッチリ」  すっぽりかぶったままむぎゅむぎゅと抱きしめられて、初めてキスした日のことが頭をよぎる。 「校則がなくなったら、付き合ってくれるんですか?」 「そんなたらればの話、分かんない」  うやむやにやり過ごそうとしたけれど、佑哉はブランケットをはがして、僕にのしかかった。 「うわっ」 「あのね、先輩。思うんです。ここって寮じゃないですか。だから、校則は適用されないと思いません?」 「は……?」 「だって、学校ではワックス禁止だから誰もつけてないですけど、寮に帰ってきて遊び行く時はみんなつけてるじゃないですか。で、もちろん、寮内では別に怒られない。という要領で言うと、寮の中では付き合っててもい」 「いいわけないでしょ」  ぐっと眉間にしわを寄せると、佑哉はなぜか、幸せそうにふにゃっと笑った。 「頭が堅くてツンデレな先輩だーいすき」  頬や首筋にたくさんキスされて、自分の体温が上がっていくのが分かる。 「可愛い。ベロ出してください」  言われた通りにうっすら口を開けて舌を出すと、ちゅるっと吸われた。  たまらず、佑哉のワイシャツを端を掴む。 「ねえ、このままエッチなことしてもいいですか?」 「やだ、外に人いっぱいいる」 「でもして欲しそう」  ズボンの上からモロになでられて、体がぴくっとしてしまった。 「固くなってる」 「……それは、だって、こんなキス」  全然慣れない。  恥ずかしくて、でもちょっと気持ちよくて、外を気にしなくてよければ……受け入れてしまっていたかも知れない。 「とにかく、ダメだよ。ぁ、やだ、……ん、」 「ねえ、先輩」 「や、んぅ……っ」  体のあちこちに触れる佑哉から逃れようとするのに、本気で逃げきれないから、やっぱり期待してしまっているのかも知れない。  呼吸が荒くなって、ちょっと触られるだけで反応してしまう。 「可愛い。直接触ってもいい?」  泣きそうになりながらこくっとうなずくと、佑哉は僕のベルトをゆるめ、ワイシャツのボタンをひとつずつ外していった。 「ここ。この間、気持ちよさそうにしてたから」  乳首をちゅうっと吸われて、思わず甘ったるい吐息を漏らす。  指でつまんだり、くりくりといじってみたり、爪の先で弾いたり。  ほんのちょっとの刺激なのに、頭がおかしくなりそう。 「下は? イクまでしていいですか?」 「……ぅ」  外に声が漏れたらと思ったら絶対にダメだけど、これだけ火がついてしまっていて、ここで終わりとできるはずもない。 「野暮な質問でしたね。恥ずかしいこと言わせようとしちゃってごめんなさい」 「ん、佑哉……っ」  両手を伸ばし、佑哉の首の後ろに手を回す。  そして、とんでもなく恥ずかしく思いながら、耳元でささやいた。 「して」 「……ほんっと、先輩って」  佑哉は僕のズボンをとると、そのままパクッと口に含んだ。 「あ、ん……っ」  とっさに手の甲を口元に当て、ブランケットを顔に押し付けた。  そうでもしないと、声が抑えられない。  吸ったり、なめたり、唇をすぼめてしごいたり。  どんな表情でしているのかは分からないけれど、多分日本中の女の子が憧れてるはずの佑哉が僕にそんなことをしていると思うと、淫らな気持ちに拍車がかかる。 「も……、ゅぅや、」 「イキそう?」 「ぃ、イッちゃぅ……」  佑哉は手早くしごきながら、ブランケットをめくってすっぽり入ってきた。 「キス。しながらイッてください」 「ん、ん……ッ、んン……ッ!……っ……!」  頭が真っ白になって、そのままイッた。

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