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 ご祝儀と言って、前田さんはきょうのプレー代をタダにしてくれた。  多分、真面目すぎる僕が友達を連れて来たことについて喜んでいるだけなのだけど、佑哉は、ポジティブシンキングと豊かすぎる想像力で、初デートのお祝いだとはしゃいでいた。  時刻は15:00過ぎ。  花園を出て、駅へ向かう。 「先輩。提案なんですけど、せっかくデート代が浮いたので、少し背伸びしたところ行きません?」 「……? どこ?」 「ラブホテルです」  ブホッと噴き出した。  咳き込むのが止まらず苦しんでいると、佑哉は僕の背中をさすりながら苦笑いした。 「そんなに驚かなくても」 「いや……いや、背伸びって……、」 「まあほんとは、ご祝儀なくても誘うつもりでしたけど」  絶句して見上げると、佑哉は目を細めて微笑んでいた。 「寮じゃ、どうしても抑えないといけないじゃないですか。でも俺、本当はもっと先輩と色々したいんです」 「いろいろ……」 「先輩のこともっといっぱい知りたいし、たくさん触りたいです。先輩は? 嫌ですか?」  嫌ですか、なんて、拒めるはずもない。 「……絶対バレなくて、問題にならないところ、なら」 「やった。風紀、乱しちゃいましょう!」  ぜんっぜん悪びれもなさそうなところに、佑哉の優しさを感じた。  堅物の僕が自分を責めないように、あえて、佑哉の独断のような言いぶりをして。  意外にも、佑哉もこういうところは初めてなのだという。  ……いや、意外ではないか。  スキャンダルになったら大変だし、学校でもトラブルを起こさないよう、かなり気を遣って生活している。  そもそも寮生活なのも、ストーカーとかで家族に迷惑をかけないためだと言っていた。 「わ、すごいすごい! お風呂光りますよ!」 「うん」 「なんで光るだけでテンション上るんだろ。子供の頃スーパー戦隊の武器買ってもらえなかったトラウマかな」 「どうだろうね」  適当に答えた。  僕は、この空間自体が恥ずかしくて、顔が上げられないというのに。  佑哉は僕の腕をぐいぐいと引っ張って、ふたりで寝たって広すぎるベッドに僕を座らせた。  と思ったら、突然、真面目な顔になる。  佑哉は居住まいを正して言った。 「これでも緊張してます。初めてですし」 「えっと、はじめてというのは……」 「セックスが初めてです」 「え? 女の子としたことないの?」 「キスしかしたことないです。それも1回ですけど」  その瞬間、僕の辞書にはなかった感情が芽生えた。  なんだろう……。  胸キュン? というやつなのだろうか、これは。 「嫌なこととかやめて欲しいこととかあったら、すぐ言ってください」 「……何されてもいいよ。こんなところだもん」  恥ずかしくなって抱きつくと、佑哉は僕の頬を片手で包んで、優しく口づけてきた。  途端、心拍数がバクバクと跳ね上がる。   「ん、」 「かわいい、耳赤い」 「佑哉も息弾んでる」 「そりゃそうでしょ。興奮しますもん、こんな、可愛い先輩がくっついてきて」  佑哉はTシャツを脱ぎ、僕のも脱がせた。  肌同士が触れ合うと、それだけで気持ちいい。  佑哉は背中をゆっくりなでながら、口に舌を割り入れて来た。

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