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……ティッシュをどの箱に詰めたのか、聞き忘れた。
という大アクシデントで、事後の余韻も何もなく、バタバタと部屋中を駆け回った。
佑哉が大笑いする。
「あはは、素っ裸で何やってんですかね俺たち」
「お任せパックの功罪じゃない? あーもう」
頭をガシガシと掻きながら、はたと気づいた。
「……いや、もうこのままお風呂入れば良くない?」
「あっ、そっか。部屋から出なくてもお風呂入れるんですもんね」
寮生活になじみすぎて忘れていたけど、いつでもお風呂に入れるじゃないか。
落ち着いてタオルと着替えを取り出し、苦笑いしながら、ふたりで浴室に向かった。
「すごい。広いね」
「とりあえずいまはシャワーで流して、湯船でゆっくりはまた夜にしましょう」
湯船にふたりで浸かる――
ただそれだけのことなのに、すごい幸せが待っているような気がする。
「同棲するって……なんか、すごい、佑哉のこと独占してる感じがする」
「そんな風に照れるの可愛すぎますよ」
佑哉は濡れた髪をざっと後ろに流して、ニコニコと微笑んだ。
「俺だって独占してるのうれしいですよ。なんか先輩って、公共物っぽいんですもん。みんなの佐久間先輩みたいな」
「……? よく分かんない」
「1年全員にアンケートとったら、9割くらいの人が同意してくれる気がします」
お風呂から上がり、なぜか甲斐甲斐しく体を拭かれ、服を着せられて。
こなした佑哉は、満足そうに僕を見下ろした。
「寮ではお世話されてばっかりでしたけど、これからは俺も先輩に世話焼きますよ。だってほら、同棲中の恋人だし?」
「佑哉のそういうところ、子供っぽくて可愛いよね」
照れ隠しでごまかしたけど、……やっぱり、ちゃんと言いたいなと思った。
もこもこのセーターを着た佑哉に抱きつく。
そして、顔を埋めたまま語り始めた。
「あのね、僕は佑哉のことが大好きだし、とっても大事だよ。それに頭が堅いから、『一緒に住む以上は、責任を持って幸せにしなきゃ』って思ってる。気持ちもだし、外部からの悪意とかも、守ってあげたいって思ってる」
佑哉は何も言わず、僕の話に耳を傾けてくれている。
「楽しいこともたくさんしたいよ。花園ビリヤード、また行こうね。出かけたら、写真撮って部屋に飾ろう。貯金もするよ。ここは期限付きだし、卒業したあとも一緒に住めるように準備しないと。あとは……」
「先輩、もう大丈夫。伝わった」
抱きしめる力が強くなって、ちょっと苦しくなるくらいぎゅうぎゅうのまま、佑哉は僕の耳元でささやいた。
「俺はそういう、先輩のド真面目なところを好きになったんです。最初は、『こんな気持ち、絶対応えてくれるわけない』って思ってましたけど、告白したのも真剣に聞いてくれたし、その後はちゃんとふたりのこととして考えてくれて、ますます好きになりました」
こんな風に改まって気持ちを伝え合うと、より一層、大切にしたい気持ちがあふれてくる。
「ゆうや」
目を閉じて、少し背伸びした、その時。
――ピロリ、ピロリ、ピロリ
「……冷蔵庫ッ!」
クラウチングスタートのごとく、ふたりで脱衣所を飛び出した。
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