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「……っ、はあっ」  ほぐしきっていない状態で太いものが入ってくるのは、想像以上に苦しかった。  本来は排泄するための器官に、自然の摂理に逆らって挿入しているのだから――佑哉の形になっていると考えると、幸せだった。 「ん、んん……」 「苦しい? 平気ですか?」  僕は、自分の下腹部を指さした。  固くなったそれを見て、佑哉はほっとしたように笑い、体重をかけて沈んでくる。  体は雄弁だ。  僕の興奮を、汗や体温や呼吸が伝えてくれる。 「奥、届きました。大丈夫?」 「うん」 「なじむまで、ゆるゆる動かしますね」  佑哉は僕の体を支えて、ほーんの少しずつ体を揺らし始めた。  キツそうだなと、表情で分かる。  僕は佑哉の腕をちょっと掴んで言った。 「好きな風に動いていいよ。風紀委員長犯すんでしょ?」 「…………俺の我慢を鮮やかに踏みにじる可愛い先輩ばかあ」 「っ、ぁあッ」  パチュンッと音が弾けて、奥の奥に到達する。  容赦なく何度も突かれて、目の端からひと粒、涙がこぼれた。 「あっ、はぁっ、あんッ……、はあっ」 「可愛い。泣いた」 「ン、んぅ、……き、もちぃっ、あぁ……っ」 「エッチだね。もっと泣いていいよ」 「あんっ、ぁっ、ぅ……、ゆうやぁ」  背中にしがみつくと、佑哉は慈しむように何度も「先輩、先輩」と呼んだ。  こんなに大好きな人に、どうしてあんなに辛く当たれたのだろう。  自分は大ばか者だった。  こんなに、こんなに僕のことばかり考えてくれる、佑哉に。 「佑哉、すき、だいすきっ、んっ」 「……ぅぁ、ちょっ、えっ?」  僕は佑哉の片手を取り、あーっと口を開けると、許可もなく人差し指と中指をくわえた。  体のあちこちをなぞる、優しい指。興奮する。  佑哉は2本の指をバラバラに動かして、僕の口の中を犯した。 「んぁ、あ、ンッ……あ」 「先輩いま、めちゃくちゃやらしい顔してますよ」 「あ、っ、……ィ、ぁっ、ぅ」  興奮のメーターが振り切れて、イッてしまいそう。  飲み込めない唾液が口の端からつーっとこぼれると、佑哉は指を引き抜き、ラストスパートのようにスピードをつけて奥を突いてきた。 「はぁ……っ、先輩、イキたかったらイッてくださいね」 「あっ、んッ、奥もっと……っ、ぁンッ、きもち、ぁああッ」  佑哉も、理性を手放し気味に、興奮に任せて腰を振っている感じがする。  こんな風に情熱的に抱かれたら、世界のことなんてどうでもよくなってしまう。  それなのに、世界でただひとり僕だけが、葛城佑哉と繋がることが許されていると……そんなことも考えていて。 「あっ、あンッ、も、イッちゃう、ゃだ、……あぁッ」 「奥でイキたい?」 「んっ、んぅ、まだやだ……っ、あ、ぁあっ、はあっ、もぅだめ、ぁあ……ッ」  イヤイヤするように首を横に振ると、また涙がこぼれた。  限界、イッてしまう。 「先輩が一番好きなとこ、突いてあげる。気持ちよくなって」 「あんっ、あッ、も、イクッ、イッちゃ……っ、あぁあっ……!んぁっ……!……ッ!ぁあ……!……っ、……ッ……」  長い長い絶頂を味わい、やがて佑哉も、僕の体をしっかりと抱きしめて、どくどくと脈打った。  僕は事後の気だるさのまま寝転がっていた。  けんかのあとのセックスはいつも以上に盛り上がるものだと、昔どこかで聞いたことがあるけれど……本当にふたりとも、激しく求め合った。  そしていまは、佑哉が甲斐甲斐しくお世話をしてくれていて、なんとも贅沢な幸せだと思う。 「……佑哉、こっちきて。ぎゅーしたい」 「えへへ。呼ばれた」  ひと回り大きな、あったかくて心地よい生き物が、布団の中にもぐりこんできた。 「せーんぱい。顔見せてください」 「……? なあに?」 「ふふ。すっごい可愛い。どこか、(あと)つけていいですか? 絶対見えないところ」 「いいけど、どこだろう」  体のあちこちを見る。  冬だから基本的にはどこも布地に覆われているけれど、体育の着替えで見られたりするのはまずい。 「じゃ、ここにします」  佑哉は布団にもぐり、僕の太ももを持って少し開かせると、ペニスをちょっとよけて、足の付け根ギリギリのやわらかいところをちゅうっと吸った。  たっぷり3秒吸って離すと、内ももに真っ赤な痕がつく。 「寮生のときはできなかったですもんね」 「うん。なんか……こんな簡単なことでうれしくなってる自分は単純だなと思うよ」 「じゃあ俺も単純です。めちゃくちゃうれしいから。先輩大好き」  キスマークがあっても、共用のお風呂で誰かに指摘されることはない。  だからまあ、つけ放題と言えばそうだけど、それでも『パンツを脱がない限り見えない位置』というのは、僕にとっては、校則遵守のギリギリラインだった。  起き上がって足を軽く開き、佑哉がつけてくれたしるしを少しなでる。  そして、半勃ちの自分に苦笑いする。  見なかったことにしようとしたけれど、再びガチガチに勃起する佑哉は、それを許してくれなかった。

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