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食事が終わり、少しだけ休憩すると、佑哉が紅茶を淹れてくれた。
そして、お待ちかねのケーキ。
悪戦苦闘しながらなんとかまっすぐ2等分できた。
実は、僕も佑哉も甘党だから、心配しなくともホールの半分は余裕だ。
パン皿にどでんと、半円のケーキを乗せる。
佑哉はフォークを手に持ち、目を輝かせた。
「最高ですね、スコップみたいにざくざく食べていくの。子供の頃だったら絶対できなかった。行儀悪いからって」
「僕はホールケーキ自体あんまり食べたことない。3人家族でどう考えても食べきれないから、いつもそれぞれ好きなの買う感じで」
手作りのケーキは、それはそれは普通の味だった。
当たり前だ。出来合いのホイップクリームを塗っただけなのだから。
それでもやっぱり、好きな人と一緒にやいのやいの言いながら飾りつけたケーキは特別で……はしゃぐ佑哉は、口の端にクリームをつけて言った。
「先輩、ここついちゃいました。ぺろってして」
「えー?」
とかなんとか言いつつ机に身を乗り出す僕も、いい加減はしゃぎすぎだ。
佑哉が顔の半分を差し出してくる。
僕はちょっと肩に手を置いて、ぺろりとなめとった。
「やっば」
「自分で言い出したんでしょ」
「食べ終わったらエッチしましょうね」
「…………」
そんなことは決まりきっているのだから、あえて言わないで欲しい。
どんな顔をしていいか分からない。
佑哉はケラケラと笑った。
「んー。早くしたいけど、早く食べちゃうのはもったいないしなあ」
「……別に、夜は長いんだし、ゆっくり食べればいいんじゃないの」
言ってるそばから恥ずかしくてそっぼを向いたら、佑哉は「くそーかわいー!」と言って、何かをこらえるように頭を掻きむしっていた。
ささやかなクリスマスパーティーが終わって、寝る支度を済ませ……いやまあ、実質、セックスの準備をしたというか。
お腹がいっぱいだしお風呂にも入ったしじゃあおやすみ、なんてなるはずがない。
寒い寒いと言いながらベッドにもぐりこみ、佑哉の体にぴったりと寄り添った。
あったかい。肌が触れ合うだけで気持ちいい。
佑哉は、僕の髪をすくってはなで、すくってはなでを繰り返していて、それも心地よくて、目をつぶった。
閉じたまぶたに、キスされる。
「ん」
「そのまま、目つぶって、俺の手の体温だけ感じててくださいね」
佑哉はそう言って、触れるか触れないかギリギリの感じで、僕の上半身のあちこちをゆっくりなでた。
いや多分、皮膚には触れていない。
温度だけが、背中や二の腕、お腹のやわかいところを滑っていて、もどかしく身悶えてしまう。
「ぁ、ぁ……っ」
「気持ちいい?」
「うん」
「触って欲しい?」
「うん、」
少し胸を反らすと、佑哉は期待通りに乳首に口をつけてくれた。
舌の先でつついたり、なめたり押し潰したり、ぢゅっと吸い付いたり。
「ぁ……っ、あん」
「声可愛い」
「だ、だって、んんっ」
佑哉は、僕の勃ち上がったペニスを避けるように、太ももや足の付け根をなでながら、乳首への愛撫を続ける。
ぬるっとした感触と共に、お尻に指が1本挿しこまれた。
「んっ、い、いきなり……っ、あ、」
「気持ちいい? 広げていいかな」
「ぁん、はあっ、……っして、奥触って」
「指だと、先輩の好きなところまで届かないんですけどね」
佑哉はぐにぐにと広げながら、中を探る。
手前の一点に触れると、体がビクッと跳ねた。
「あぁ……」
「そんなとろんとした顔で見られたら、我慢できなくなっちゃう」
「はあ、はあっ、……ん、はぁっ、あぁ」
「俺ので、奥、トントンしてもいい?」
「ん、して、はぁっ」
僕はもどかしく思いながら、自ら足を抱えて言った。
「そのまま挿れて」
「え? ゴムつけないの?」
「うん。中に出して欲しい」
なんでそんなことを思ったのかは分からない。
赤ちゃんができるわけでもないし、射精するのがコンドームの中でも僕のお腹でも、何も変わらない。
それでもなぜだか、佑哉の熱を、自分の体に直接ぶつけて欲しいと思ってしまったのだ。
「後で辛いかもよ」
「いい」
短く答えてもう一度足を抱え直すと、佑哉はごくりと生唾を飲んだ。
「挿れるね」
ずぶずぶと、太いものが侵入してくる。
僕は佑哉の背中に手を回して、声にならない声を上げた。
なんだこれ、気持ち良すぎる。
佑哉がゆるゆると動き出すと、質量の往復を感じて、身悶えた。
「ぁ……、ゆうやので、お腹ぎゅうぎゅうなの……うれしい」
「……っ、やっば。加減効かなそ」
「あ、ぁ……っ、ん、ぁあ、きもちぃ」
暗い室内に、肌がぶつかる音が響く。
僕の粘膜と佑哉のものが擦れ合って、ローションがぐちゅぐちゅと混ざっている。
佑哉の肩越しに見えるのは、閉め損ねたドアの隙間からチラつく、クリスマスツリーの灯り。
僕たちの呼吸と、脈拍と、電飾の点滅が非現実感を誘って、気持ちが膨れ上がる。
「はあっ、好き、佑哉っ、すき……っ」
佑哉もたくさん好きだと言ってくれて、その度に腰と背中がゾクゾクした。
「先輩の中、一生懸命吸い付いて、ぎゅーって締めてくる」
「んっ、もぉ、……ぁ、」
「イッちゃいそう?」
「はあ……っ、あ、ン、んぅ」
「我慢しなくていいですよ。だって」
佑哉が耳元でささやいた。
「俺たちにはクリスマスが2倍ありますから」
「あああっ、も、あッ、イ……、ぁああっ」
興奮のメーターが振り切れた。
僕は佑哉の背中にしがみついて、おかしくなったみたいに嬌声を上げる。
「も、ぁあッ、ゆうや、イッちゃう、あああっ」
「イッて、気持ちよくなって」
「はあっ、あぁ……ッ、だめ、イク、ぁあっ!……ああああっ!……!……ッ…………!ぁあっ……!……っ」
イキながらガンガン奥を突かれて、頭が真っ白になる。
「先輩、出すよ」
「んんっ、はぁ、出して……っ、佑哉、ぁあ」
「……ッ!……!」
お腹の中で佑哉のものが脈打って、ビュルッビュルッと吐き出されるのが分かった。
佑哉は息ができないくらい僕を強く抱きしめていて、僕は逃げ場もなく、全ての快感を受け止める。
やがて、荒れた呼吸を落ち着けた佑哉が、腕の力を抜いた。
そっと離れ、引き抜くと、トロッと中からこぼれ出す感触がした。
「……出されちゃった」
「ごめんなさい、やっぱり嫌だった?」
「ううん。逆。なんかうれしくて」
マーキング、みたいな。
ぽつりとつぶやいたら、佑哉は、「うー」とも「あー」ともつかない不明瞭な声を漏らしながら、僕の胴体に巻きついた。
「……先輩、好きすぎる」
「うん」
甘えて手を繋いでくる佑哉が、可愛くて愛しくて、仕方なかった。
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