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12 委員長の資質

 猛ダッシュで帰ってきた。  カバンを放り出して、寝室へ。  もどかしく思いながら、コートやらブレザーやらを脱ぎ、ベルトを外してペニスを取り出した。 「ん、ん……っ」  セーターも脱ぎ捨ててワイシャツを噛んでめくり上げると、乳首を擦りながら、雑に自慰を始めた。  下校中にエッチな気分になってしまって、でもきょうは佑哉は仕事。 「ん……っ、ふぅっ」  寮時代も含めて、付き合い始めてからは、ひとりでなんて全然しなくなった。  したら不誠実かな、と思っていたからだ。 「ん、んぅ……、ふ、んん……」  早くイキたくて、乳首もペニスも、強めにいじくる。  口の刺激も欲しいから、ワイシャツは唾液でびしょびしょになるくらい、噛んだり吸ったりしている。 「ん……っ」  徐々に上り詰めていく……と思ったら。 「先輩、何してるんですか?」 「……? ぁ」  多分、ものすごくだらしない顔で見上げていたと思う。  なんで佑哉が居るのか分からないけれど、それよりも気持ちいいのが止まらない。  口を離してしまったから、シャツの裾がはらりと落ちて、そうすると声が抑えられない。 「ぁ、ゆうや、……エッチな気持ちとまんなくて……っ」 「先輩、俺が仕事の日、いつもこんな風にしてるんですか?」 「ん、ちが、ぅ……っ、初めて。どうしよう、気持ちいい」  見られていて恥ずかしいのに。  佑哉は眉間にしわを寄せたまま、僕を押し倒した。  しゅるりネクタイを抜き、僕の両手首を結んでしまう。 「あ、やだぁ……っ、これ、とって」 「ダメですよ」  ニコリともしない佑哉は、下着ごと僕のズボンを取り去って、お腹の上にトロトロとローションを垂らすと、片手で手首を押さえつけた。  もう片手でローションを手に取り、何の予告もなく、お尻の穴に指を埋め込む。 「ぁ、あ……っ」 「こっちはまだだったんですね」 「んぅ……、なか、あつい……」 「うん。キツキツなのに、欲しい欲しいって吸い付いてきてますよ」  ぐちぐちとかき回されて、訳がわからなくなってくる。  なんでエッチしてるんだっけ? 「あぁっ、ん、んっ、……ちんちん触りたい」 「ダメ。お尻でイッてください」 「お願い、気持ちよくなりたい」 「……しょうがないな。手、頭の上に上げたまんまでいてね。できる?」  こくっとうなずくと、佑哉は押さえつけていた手を離し、僕のペニスに触れた。 「ぁあ……ッ」 「気持ちいいの、好き?」 「ん、すき」 「中も、先輩が好きなところトントンしてあげる」  ペニスをしごきながら、前立腺を規則正しく刺激されたら、腰が跳ねた。 「ぁあッ、あんっ、ンッ……っ」 「すごいエッチな顔してる」 「ゆうや、気持ちいい、んぅ」 「どうしちゃったの?」 「言えな……んっ、はぁっ」  大してほぐれてもいないはずだけど、もう欲しくてたまらない。 「挿れて、」 「……はー。ほんっと」  佑哉は雑にズボンの前を開け、適当なところまで下ろしたと思ったら、そのまま入ってきた。 「んんっ、おっき……」 「当たり前でしょ、ド真面目な先輩のひとりエッチなんか目撃しちゃって、興奮しないわけがない」 「ぁ、あ……っ、ネクタイやだあ、とって」 「ダメです」  腰を掴んで激しめに奥を突いてくるから、僕は泣きながら嬌声を上げた。 「やら、やぁ、……あぁッ、きもちぃ、はぅ……っ」 「どうする? 風紀委員長がこんなにエッチなの、みんなにバレちゃったら」 「ん、あ……、や、言わないで……っ、ぁあッ」 「言わないけど」  佑哉はすーっと目を細めて、静かに僕を見下ろす。  でもその表情とは裏腹に、僕の体をむさぼる動きは激しくて、僕はすっかり狂乱の中にいた。  5分、10分……。  佑哉はぽつぽつと言葉で僕をいじめて、その度に僕はもっと興奮して、(みだ)らになってしまう。 「あンッ、……も、あぁっ」 「イッちゃいそう?」 「んっ、イキたい……っ、イキたい」 「いいよ。イッてるとこ見せて」  佑哉は腰を抱え直し、パンパンと激しく腰を振った。 「あっ……、イクッ、ぁああ……ッ!……あああああああっ!」 「……っ、やば」  のけぞりながら射精。  ぎゅーっと中が締まるのが、自分でも分かる。   「ごめ、……っ出るッ」  佑哉は僕をきつく抱きしめ、全部中に出した。  目を覚ますと、僕はきっちり羽毛布団をかけられ、寝かされていた。  服は……着ていない。  隣には裸のままの佑哉がいて、こちらに背を向けていた。  壁掛け時計は17:30を指していて、軽く1時間は寝ていたと思われる。 「ゆ、ゆうや……」  とんでもなく恥ずかしく思いながら呼ぶと、佑哉はいじっていたスマホをベッドサイドに置き、くるりとこちらに向いた。 「おはようございます。無理させちゃってごめんなさい」 「いや……こちらこそ、っていうか、なんか、その……」  言い淀んでいると、佑哉はほのぼのとした笑顔で頭をなでてきた。 「なんであんな可愛い事態になってたんですか?」 「ぅ……帰り道に、急に……そういう気分になっちゃって。ていうか、あれ? 佑哉きょう、仕事じゃなかった?」 「あ、インフルがふたり出ちゃって。うつったらヤバイから中止になったんですよ。いやあ、玄関開けたら奥から可愛い声が聞こえて、どうしようかと思いましたけど」  なんで、なんであんなこと……しかもタイミング悪く見られちゃうし……。  軽く後悔していると、佑哉が頬擦りしてきた。 「急にムラムラしてきちゃったんだ。可愛い」 「はずかしいよ」 「俺はいいもの見られてラッキーでしたけど」  なんでこんなことになったのかを、言った方がいいのか言わなくてもいいのか……。  いや、付き合ってる相手を差し置いてひとりでするなんて、不快に思われたって不思議はない行為なのだから、ちゃんと説明しないと。 「あの、あのね、佑哉」 「なんですか?」 「その、なんでひとりでしちゃったのか、一応説明した方がいいかなって」 「え、聞きたい聞きたい」 「下校中、目の前に1年の男子が4人で歩いてて、なんかセックスしてみたい的な話してて。それだけだったら別に、男の妄想だし何とも思わなかったんだけど……、その……内容が、『もし俺が葛城くらいイケメンだった何々する』みたいな」  自分で言ってて馬鹿らしくなってきた。 「それが結構過激で、絶対佑哉がしなさそうなことばっかり言うから」 「え? 他人の妄想聞いてその気になっちゃったんですか?」 「…………」  絶対真っ赤になってる。  恥ずかしくて泣きそうになっていると、佑哉は片肘をついて半身を起こし、僕の顔を覗き込んだ。 「しなさそうなことって? 例えば?」 「縛るとか。イケメンだったら許されるだろみたいな暴論と共に」 「あはは、軽く縛っちゃったけどね」 「いや、なんかもっとこう、ハードな感じで、全身縛り付けちゃって身動き取れなくするみたいな」 「ふーん?」 「それで、筆で乳首とかなぞっていじめるとか」 「なるほど?」 「そしたらちょっと勃ってきちゃって……」  もうこれ以上は言いたくない。  そっと布団の中にもぐっていくと、佑哉は優しい声で言った。 「楽しそうだし、今度やってみます? 痛くなくてエロい結び方とか調べますよ」 「えっ? いや、いい。いい。やんない」 「筆とか全く思いつかなかったし。すごいなー、みんなどこでそういう情報仕入れてくるんだろ」 「童貞の妄想の力だと思うよ。我が校の弊害だよね。交際禁止の結果、欲求不満があられもない想像に……」  目から上だけを出す僕の頭を、佑哉はもふもふとなでた。 「先輩オリジナルの妄想も叶えてあげますから、何でもリクエストしてください」  し、しない……。リクエストなんて。

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