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「まず、状況確認からしよう。昨日の放課後、転校生が1人になった隙を狙い、生徒会会長親衛隊副隊長 野崎文及びその信者が暴行を加えた。違うか?」
「その通りです。」
「何故、それを行った。場合によっては処分は考え直す。」
「会長様が…、転校生とキスをしているところを見て…。僕は…。」
「ただの嫉妬か。」
「違います。最初は確かに転校生を妬んだ。でも、隊長が我慢しているのに僕らが勝手に制裁するのは間違ってるって思って…。
でも、この前、転校生と会長様がキスしている所を目撃して、いつだって強くて会長様を思って行動してる隊長が泣いたんです。
僕、許せなくて。だって、隊長は会長様のことを本気で好きだから。我慢だって平気でする人だから、なのにあの時僕がいるのにも関わらず泣いたんです。いつもなら僕らなんかには絶対に涙なんて見せない人なのに。」
副隊長は僕なんかの為に制裁をしたのか。
そんな…、副隊長が制裁したのは僕のせいじゃないか。
「それは親衛隊隊長を理由にしているだけじゃないのか。」
「なっ、ちがっ、隊長、僕はそんなつもりじゃ…。」
「分かっています。しかし、副隊長。あなたのした事はどんな理由であろうと許されることではないとわかっていますね?」
「はい。」
「僕があなたを止められなかったのも事実です。会長様、僕は本日付で親衛隊を脱退します。ですから、どうか彼には寛大な処分をお願いいたします。」
「そんな、隊長!」
「処分の決定は一条ではなく俺がする。罰は第三者が行うと決まっているしな。安心しろ、そう重い罰を与えるつもりはない。」
風紀委員長の言葉にホッと息を吐く。
長年親衛隊で一緒にいた副隊長が退学になんてなって欲しくない。会長様に顔を合わせるとふいっと逸らされる。ズキリと胸が締め付けられた。
「はぁ…、話しを聞いて大方理解した。今回の処分は三日間の自宅謹慎でいいだろう。転校生に怪我を負わせる前に捕らえられたことも大きいが、親衛隊に碌な説明もしなかった一条も悪い。異論は認めん。いいな。」
その場で皆、その処分に頷いた。
副隊長も思いの外軽い処分だったのが嬉しかったのか、少し涙を流していた。
「副隊長、あなたには副隊長の職を降りてもらいます。」
「はい、僕はしてはならない事をしました。当然です。」
「しかし、必ず親衛隊には戻って来てくださいね。副隊長の席はなくとも、あなたが会長様を慕っているのは事実。親衛隊に残るのに不満がある人がいれば僕が必ず説得します。ですから、三日後安心して戻って来てください。いいですね?」
「はいっ。」
副隊長は涙を抑えながらもニッコリと満面の笑みを浮かべた。
じゃあ、と言葉を残し副隊長は去って行った。
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