10 / 28

10

風紀委員長の元へと駆け寄る。 「風紀委員長様、先程は寛大な処分、ありがとうございました。」 「頭を上げろ。俺は最初から処分に対し重いものを課そうなどとは考えていなかった。一条の親衛隊が最近では大人しかった事には気付いていたしな。それで何か理由があるのだと考えていた。」 「風紀委員長…。」 「風紀の古株連中も気付いている。気付いていない、いや気付こうとしないのは一条くらいだ。それに、お前がこっそり生徒会の仕事を手伝っている事も把握済みだ。あの処分は今までお前が必死に築き上げた成果とも言える。だから、親衛隊長はお前がすべきだと俺は思っている。」 「ありがとう…ございます。でも、僕はこれを機に親衛隊長を親衛隊を脱退します。 副隊長が僕のために制裁をしたなんてそんな自惚れたことは考えてませんけど、それでも副隊長のリミッターを外してしまったのは僕です。 それに…、僕はもう親衛隊長を務めていい人間ではありません。副隊長が制裁を行ったと聞き、僕は一寸たりとも転校生の心配なんてしなかったのですから。 会長様が大切になさってる方がどうなろうと関係なかったのです。親衛隊の存在意義は主人となる方を支え、見守る事。 だと言うのにその主人の大切になさる方を僕は萎えがしろにした。僕は結局、会長様に過ごしやすい日常を送ってもらおうだなんてことは考えていなかったのです。 ただ、近付きたくてお話ししてみたくて笑って欲しくて、愛して欲しい。だから彼の隣にいる人たちを簡単に妬む。 そんな人間がこのまま親衛隊に所属していたらきっと隊は荒れてしまいます。 なによりこれ以上、会長様と転校生がキスしているところを見たくない。だから、もう辞めます。辞めると決めました。」 「お前はいいのか?それでいいのか?副隊長には待っていると言いながらもお前は先に辞めるのか?」 「酷な事をします。でも、副隊長は純粋に会長様が好きなのです。親衛隊を自分から辞めるという考えは決してしない。強制的に脱退を命じなければ辞めたくないはず。僕はそれを知っているので戻ってくるように言ったのです。」 「あいつを思うならお前は辞めるべきではない。だが、辛いというなら無理強いはせん。お前はよく頑張った。」 その言葉を聞けただけで満足だ。 親衛隊長を務めて半年。 たった半年だったが、隊の生徒達は僕が定めたルールを守ってくれた。 優しくて愛に敏感な彼ら。 本来ならもっと彼らのストレスの捌け口になるはずだった。 でも、もう無理だ。 会長様が愛を呟く姿も、あの冷たい眼差しで睨みつけられるのも耐えられない。 僕にはもう、耐えられないのだ。 「明日には除隊届けを出します。引き継ぎ等はしますので、心配しないで下さい。」 「ああ。うちの連中にも言っておく。」 「お願いします。では…。」 風紀室を出て、僕は親衛隊の生徒を呼び出す。 これが最後の仕事だ。

ともだちにシェアしよう!