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12 【side アキ】

生徒会室を出て10分。 流石にそろそろ戻らないとサボっていることが暴露る。 だけどあそにいる転校生は煩わしく、当たり前のように愛の言葉を呟く生徒会連中を見ていると鳥肌が立つ。 「戻りたくないな。」 近くのベンチに腰掛け空を見上げる。 前は寧ろ外に出たくないからこそ生徒会室で引き篭もっていたのに。 状況が真逆だ。 ぽけ〜と時間が過ぎるのをただ見守るだけ。 パソコン持って来れば良かったと後悔した。 「アキさん?そこで何をしていらっしゃるのですか?」 「ん?ああ、親衛隊長…。」 「僕はもう親衛隊長じゃありませんよ。それより珍しいですね。アキさんが生徒会室を出てこんな所で寛いでいるのなんて。少し前まで太陽を浴びたら焼け死ぬと言ってませんでした?」 冗談交じりで言葉を放つ元親衛隊長。元気になったのかとその姿をじっと見つめるが、彼は見るからにやせ細り無理をしているのが伺えた。 「どうやったら親衛隊長の柵から解放されたのにそんな姿になれるの?普通は逆じゃない?仕事がなくなって楽になったんじゃないの?」 「やはり、わかってしまいますか…。気を遣われないよう食事はしっかりと摂っていたんですが、戻していたら意味がありませんね。」 目元に薄っすらクマも見える。 顔色も悪い。 会長から離れただけでどうしてこんなんになるのか理解が出来ない。 「何?嫌がらせでもうけてんの?そんな話、聞いたことないけど…。」 「嫌がらせ?そんなっ、むしろみんな気を遣ってくれていますよ。 …会長様と昔、約束をしていたのです。その約束を果たされるのを待っていたんですけど…。約束はもう果たされないのだと思うと悲しくて辛くて悔しいだけです。」 「約束って何?そんな約束するような人間でもないでしょう、会長は。」 「昔の話ですよ。僕が初めて社交界に参加した時、会長様とお話しする機会があったのです。当時の僕は、会長様の御家が凄いという事を漠然としか理解していませんでした。だから…その…、遊園地を貸切にするとその…約束したのです。」 「遊園地を貸切?何それ…。っていうか、遊園地の貸切くらい君の家でも出来るでしょ…。」 「父に頼んだことはありますが、無理だと一言言われました。幼かった僕はうちでは金銭的に厳しいのだとそう考えたのです。単純に僕にかける時間がないという意味だったのですが。 今はまぁ、貸切はやろうと思えば出来るでしょう。ただ会長様とのたった一つの約束事でしたので果たされることを願い待っていたのです。 でも、もう諦めます。 諦めなければならない…のに…。 幼い頃にした小さな約束を僕は忘れたくない。会長様と唯一の繋がりを自分から無くすなんてしたくない。我儘なのです。僕は。どうしようもなく、会長様が好きなのです。」 「そう簡単に諦められるものではないってなんとなくだけど理解したよ。でもさ、君は辛いんじゃないの?」 揺れる瞳を見ながら尋ねるとふっと目を逸らした。 親衛隊長が会長を好き。 それは周知の事実だ。 でも会長はそれを蔑ろにした。 転校生という異分子に何かを見出して、こんなにも健気に慕う親衛隊長を捨てた。 会長は後悔する。 いや、既にしているかもしれない。 どちらにせよ、もう遅い。 元親衛隊長が例え会長をまだ好きであろうと、また隊長の地位に戻ろうとも、関係ない。会長は彼を傷つけたのだから。

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