18 / 28
18
「す、すみません。」
「いや、いい。」
その声は…。
「会長様…?」
「お前は親衛隊長か…。」
「す、すみません。アキさんと逸れてしまったみたいで。これで失礼します。」
こんな所で会長様にあったら己の欲が抑えられなくなる。一緒にいたいのにいられない。そんな現実は夢のようなこの時間には必要ない。
「待て、お前がアキと回っているのか?」
「…?はい。」
「…くそっ。おいっ、付いて来い。出口はそっちじゃないだろう。」
「え?でも…。」
「付いて来いと言っているんだ。」
僕はよく分からないまま、会長様の後について行った。
お化け屋敷から出ると眩しい光が目に染み込み、目を薄く細めた。会長様の顔をこっそりと伺う。
不機嫌そうに眉を寄せる会長様。
携帯で誰かとやり合っているようだ。
僕もアキさんにメールを送る。
外にいること。
会長様と一緒だということ。
この後、どうすればいいか。
そんな内容を送ると、すぐに返信が帰ってきた。
『会長のデート相手と今一緒にいる。お化け屋敷で電気が消えた時声がしてそっちに向かったら、足を捻ったって。だから、少しの間その子に付き添うから、会長と代わりにデートしてて。会長には僕からも言ってあるから。』
会長とデート…。
ちらりと横顔を再度見ると、眉間のシワが増えていた。
やはり僕と一緒にいたくないのだ。
無理しなくていい。
僕1人でも大丈夫だ。
そう伝えようと口を開けた瞬間。会長の口から予想に反する言葉が飛び出した。
「どこに行きたい。」
「えっ?」
「アキから連絡が来ただろう。本来ならデート相手の交換など出来ないが、仕方がない。それに、一応新歓の商品としてきている。不快にさせるようなことはしねぇよ。」
「あ…。それなら、お言葉に甘えさせて貰います。観覧車に乗りたいです。」
「行くぞ。」
「はいっ。」
これはきっといい機会だ。
会長様のことを諦める為の機会。
観覧車が回り終わる前に全てを話して、そして会長様を諦めよう。
信じて貰えるだろうか。
いや、信じてもらえなくて良い。
僕は…
前に進みたい。
だから、もう覚悟を決めよう。
『良い機会だし、会長に言いたい事全部言いなよ。そしたら前に進めるんじゃない?』
アキさんから貰ったメールに書かれていた文を見て、僕はそう思った。
ともだちにシェアしよう!