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「す、すみません。」 「いや、いい。」 その声は…。 「会長様…?」 「お前は親衛隊長か…。」 「す、すみません。アキさんと逸れてしまったみたいで。これで失礼します。」 こんな所で会長様にあったら己の欲が抑えられなくなる。一緒にいたいのにいられない。そんな現実は夢のようなこの時間には必要ない。 「待て、お前がアキと回っているのか?」 「…?はい。」 「…くそっ。おいっ、付いて来い。出口はそっちじゃないだろう。」 「え?でも…。」 「付いて来いと言っているんだ。」 僕はよく分からないまま、会長様の後について行った。 お化け屋敷から出ると眩しい光が目に染み込み、目を薄く細めた。会長様の顔をこっそりと伺う。 不機嫌そうに眉を寄せる会長様。 携帯で誰かとやり合っているようだ。 僕もアキさんにメールを送る。 外にいること。 会長様と一緒だということ。 この後、どうすればいいか。 そんな内容を送ると、すぐに返信が帰ってきた。 『会長のデート相手と今一緒にいる。お化け屋敷で電気が消えた時声がしてそっちに向かったら、足を捻ったって。だから、少しの間その子に付き添うから、会長と代わりにデートしてて。会長には僕からも言ってあるから。』 会長とデート…。 ちらりと横顔を再度見ると、眉間のシワが増えていた。 やはり僕と一緒にいたくないのだ。 無理しなくていい。 僕1人でも大丈夫だ。 そう伝えようと口を開けた瞬間。会長の口から予想に反する言葉が飛び出した。 「どこに行きたい。」 「えっ?」 「アキから連絡が来ただろう。本来ならデート相手の交換など出来ないが、仕方がない。それに、一応新歓の商品としてきている。不快にさせるようなことはしねぇよ。」 「あ…。それなら、お言葉に甘えさせて貰います。観覧車に乗りたいです。」 「行くぞ。」 「はいっ。」 これはきっといい機会だ。 会長様のことを諦める為の機会。 観覧車が回り終わる前に全てを話して、そして会長様を諦めよう。 信じて貰えるだろうか。 いや、信じてもらえなくて良い。 僕は… 前に進みたい。 だから、もう覚悟を決めよう。 『良い機会だし、会長に言いたい事全部言いなよ。そしたら前に進めるんじゃない?』 アキさんから貰ったメールに書かれていた文を見て、僕はそう思った。

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