横で隊長を眺める会長を見て声を掛けた。 「どうしたの。そんなに睨みつけて。」 「…あいつはなんで。」 「初恋の相手が隊長だと分かって胸のモヤモヤが酷くなった？ずっと悩んでいたよね。初恋の相手の夢を漸く叶えられそうなのに、相手がどこのどいつなのか分からないから。 ずっと探していた。そこに現れた園崎ハノカ。探してたハノと名前がそっくりな上、自分に臆さず話す感じがそっくりだった。 でも、それでも他の生徒会の連中より転校生に落ちなかったのは…、少し隊長を気にしていたからじゃない？」 「お前は知っていたのか。あいつがハノだって。」 「確証はなかったけど、隊長の話しを聞いていたら…ね？」 多くは語らない隊長だから、情報量なんて殆どないけど。いつだか聞いた会長の初恋の話にマッチしていたから、なんとなくそうなんだろうと察した。 「なぜ言わなかった。」 「言う必要ある？会長はただ初恋を拗らせてるだけだよ。だって、気付かなかったでしょ。隊長が初恋の相手だって。あんなに恋焦がれた人だって。挙げ句の果てに親衛隊という理由だけで毛嫌いして、突き放した。隊長が言い出せなかった理由、分かるよね？」 「…。」 「それとも、それでも隊長が悪いって？会長は知っていた筈だよ。親衛隊が昔とは全く違う役割として機能し出したことを。それを知らぬ存ぜぬで通した。 隊長が死ぬ気で君のことを考えて正してきたのに、結局君は何一つ認めなかった。会長は結局、誰も好きじゃない。好きなのは、愛してるのは、初恋の人の為にここまで頑張ってきた自分でしょ？」 無表情で感情が読み取り難い。 でも、図星だろう。 知ってるよ。 それに、本当は会長は…。 「アキさん。そろそろ行きましょう。」 「…そっちはいいの？」 「はい。野崎君も泣き止みましたし。まだ僕、遊園地を堪能できてません。」 「そう。なら、行こうか。」 歩き出したその時、隊長がピタリと足を止めた。振り返ると、会長が隊長の腕を掴んでいた。 「お前は、お前はそれでいいのか。」 「…はい。」 にっこりと微笑んだ隊長は今まで見たことない程に美しく、どこか儚げだった。