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それは確かにそこにあった。 小さな傷…。 「洋太郎、その傷、どうしたんだ。」 「ああ、これ?さっき走ってたら転んだ。」 未だに坊主頭の洋太郎の腕には痛々しい傷が残っていた。少しおかしいと感じた。ただ、それだけで終わった。 その次の日。 その次の週。 洋太郎によく傷がつくようになった。 痛々しいその腕に流石に何かあると感じた。 「洋太郎、何かあったんだろ。何があった。」 「何も無いって。」 「何も無いはずがないだろ!昨日も、一昨日も、その前も、お前、どこかしらに傷がついてんだろ。何かあるんだったら俺がなんとかする。だからっ!」 「何もないって言ってるだろ!お前には関係ない。放っておいてくれ。」 初めての拒絶。 幼馴染として、親友として。 そうして接してきた。 今まで喧嘩はしてきた。 でも、こんな拒絶はされたことがなかった。 走っていく後ろ姿を見て、ぎりっと歯を食いしばった。 そして、数日が過ぎ、事件は起こった。 洋太郎を心配した浩也が、彼の後をつけたのだ。そして、自分の親衛隊が洋太郎に暴行している姿を目撃した。 「洋太郎!おまえら、なんでこんなこと…。」 「浩也様…。ち、違うんです。これは、そう!これはこいつが浩也様の側に近寄るから。浩也様は孤高であらねばならないのです。こんなチンケで家もそこそこな奴に付き纏われていいお方ではないのです。 僕たちは正しいことをやってのけただけです。 それより浩也様、僕たちと一緒に気持ちいいことをしませんか?こんなゴミなんかよりきっともっといいことをして差し上げます。」 ぴきり。 抑えていたものが弾けた。 だが、振り上げた右腕はぴたりと止まった。 「浩也、だめだよ。こんなことしたら。せっかく家に認められたのに、また縛られる生活を送ることになる。ハノに会いたいんでしょ?なら、我慢しなきゃ。」 洋太郎が俺と親衛隊の間に入り、よろよろと俺を抑える。グッと耐えて、親衛隊を睨みつけた。 「消えろ。」 ひっと悲鳴を上げて、逃げていった。 俺は洋太郎の腕を肩に回し、保健室に向かう。 ボロボロになった幼馴染に、どうして気付かなかったのか。 ひたすらに後悔した。

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