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夢のような心地だ。
こんなに晴れ晴れとした気持ちは今までなかった。
あの日から1週間がたった今でも、どこかふわふわした気持ちでいる。
遊園地に行ってから変わったことが3つある。
一つは僕に親衛隊が出来たこと。
何度も断ったけれど、それではあなたの身が危ないと、俺たちに護らせてくださいと、見ているだけではつらいと言われ承諾した。
親衛隊隊長をしていたからこそ、親衛隊でしか出来ないことがあることは知っている。彼らの気持ちを無碍に出来なかった。
二つ目は親衛隊による転校生への当たりが弱くなったこと。
生徒会として転校生を正式に迎えたことも大きいけど、会長様が親衛隊に転校生についての説明を行ったことも一つの要因だろう。
元副隊長である野崎君が言うには、会長様は転校生を恋愛対象ではなく友人として扱っていると説明したらしい。
そこでホッとした自分はまだあの人に未練を残しているのだと他人事のように思った。
そして、三つ目は…。
「ミハノ、もうすぐ夏休みだけど、どこか行くの?」
「あっ、アキさん。夏休みですか?夏休みは兄の仕事のお手伝いをする予定です。」
「お兄さんとはうまく言ってるみたいだね。」
前に進もうと自分自身で考えた結果。
未来を見据えようと、兄に自分はどうあるべきか聞いた。兄は次期当主として父の仕事の手伝いをしていたが、ちょうど先月、会社の常務として就任していた。
家の為に何か出来ないかと聞いたところ、兄は『お前が俺の右腕になるんじゃないのか。』とそう告げた。
そのとき、やっと自分がどうあるべきなのか理解した。
「まだまだ仕事は慣れていませんが。兄とはきちんと兄弟を出来ています。初めからこうであるべきでした。いえ、勝手に僕が兄の立場を羨んで、妬んできただけだったので、僕自身に問題があったのですが。」
「ミハノは立派になったね。」
「そうですか?」
「うん。前を向いて歩き出してる。」
「…生徒会の方はどうですか?」
「転校生は相変わらず煩いよ。でも、まぁ、会長が何故か転校生の教育を施し始めたから、少しはマシになったけど。」
教育…?
「気になる?」
気になるかと言われれば気になる。会長様は何がしたいのだろうとも思う。
「僕にはそれを知る権利がありません。」
「そっ、それならいいけど。夏休み、空いてる日があるんだったら遊びに行こうよ。」
「遊び…?」
「学生のうちに少しは遊び慣れてたほうがいいよ。」
「そう、ですか。アキさんを楽しませる事ができるか分かりませんが、行ってみたいです。」
「なら、どこ行こうか。せっかくなら遠出するのもいいかもね。」
山に海、別荘地でもいい。
そんな話を永遠にした。
友人。
その言葉が過った。
今までいなかったその存在はこんなにも心を安らかにしてくれるものなのだ。
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