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3-1 1人目の客
「いっ……た…」
「大丈夫?声聞こえてたよ、痛かったでしょう」
「…ッ、こ、来ないでください…!」
玄関まで迎えに来たらしい人を睨みつける。
見た目は普通の、むしろ上品なおじさんだ。
逃げたくて、必死で押すけどドアは開かない。
おれを連れてきたあの人が抑えてるんだろうか。
「っいやです、出して!ッ、いやだ……!」
ドアを叩きながら叫んでいると、部屋にいたおじさんに後ろから羽交い締めにされた。
「落ち着いて、大丈夫だよ」
「っや、だ…はなして!嫌……ッ、」
「酷い事はしないよ、きみの話を聞かせてよ 」
「……ッ、……っ…?」
ーーー
ソファに腰掛けておじさんと話をした。
最初は警戒していたけど、穏やかに聞いてくれるからつい沢山話をしてしまった。
春までは良い父だったこと、リストラされギャンブルに手を出し、ついには借金を残し逃げてしまったこと。バイトも学校もどうなっているのか分からないこと、ここに連れて来られた時のこと…
話す内に涙が出て、連れて来られてからの事はほとんど話さなかった。
動画を見たなら、知っているんだろうけど。
「……そうだったんだね…辛かったね、」
本格的に泣くおれをあやすように撫でてくれたおじさんは優しくてホッとして余計に涙が出てしまう。
…助けてあげようか、
ふとおじさんがそう言った。
「このお店自体から買い取ることも出来るんだよ…
君を買ってあげるから、あとは自由になればいい。
もちろん、借金も残っているなら返してあげる」
「…………へ、」
「決して安くはないけど、払ってあげる事は出来るよ」
どうだろう?とにっこりしてくれるおじさんが神様みたいに見える。
少し話しただけなのに、そんな良い話がある…?
「…もちろん、決めるのはきみ次第だけどね。
ただあげる訳にはいかない…決して安くもないし、それ相応の見返りは求めるよ。」
見返り……
「この店に来た以上、客としてもてなして欲しい。
言っている意味は分かるね?」
にっこり、顔を覗き込まれる。
…………ほんとに、助けてくれるの…?
ああ、もちろんだ。
…………………………っ、
少年は縋りたくて、話をのんだ。
その人の笑顔に、裏があることも知らずに。
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