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5-1 2人目の客

少し日が空いて、また仕事の日はやって来た。 世話係は何人かいるのか、初めて見る人に誘導され部屋の前までたどり着く。 「っ…、…ぅ、…」 「さっさと入れ、」 部屋を前にすると心臓がバクバクして、 後ずさりするとグッと襟首を掴み中へ放り込まれた。 「客待たせんじゃねぇよ!」 ドア越しに凄まれ、肩を縮ませ奥へ向かう。 身体が拒絶して、一歩ごとに気分は悪くなる。 キィ、と扉を開き、挨拶しないとと思うのに、 正面にあるベッドを見た途端、さぁ…と全身の血の気が引いて、その場にへたりこんでしまった。 あーいらっしゃいー、と軽い声が聞こえる 「っ…う、そ、なんで…」 触ってもいないのに、自身のものは反応していて。 「…なに、調教済みの子?w」 「ひっ…や、だ…いや…っ」 「取って食いやしねーしw」 愉しそうにぐいっと腕を引き立たせた青年は、ベッドに誘導し押し倒し、するっと慣れた手つきで身体に触れる。 「……っ、ゃ…やめ…ゃ…ッ」 それだけの事なのに、つい先日のことがフラッシュバックし、恐怖感に全身が蝕まれていく。 何時間も拘束され、嬲られ続けた記憶が。 「…ねーなんか顔青くね?そーゆー演技?」 「っ…や…ぅ…、ゃ、やだ…っ、や…」 「ガチで震えてんじゃん、えー、大丈夫かよ」 ぱっと手を離し、少しうろたえる気配がした。 んー…と一瞬唸ったあと、また手が伸ばされた。 「ほらこっち、はい、ぎゅー」 「……ッな、に…っ」 「んー、ベッド怖いなら離れるかなーって」 腕を肩に回させ、抱っこしてソファに向かう。 お客さんがボスッとソファに座り、 おれは抱っこの体勢のまま脚の上に座っていて 震える背中をとんとんとん、としばらく叩いてくれた。 「落ち着いてきた?ちょっとはマシー?」 「…っ、…すみ、ませ…ッ、」 「ンなビビんなってー。むしろごめんなぁ、」 わしゃわしゃ、と犬みたいに撫でられた。 「…あー、俺んちさー地味に金持ちで? 女の子寄ってくるし、色んな子としてたんだけどさー」 そう他人事のように話しながら、 身体はあやすようにユラユラ揺れていて。 「…なーんか急に虚しくなって、いったん離れたくて、ふらーっとココ来てみただけなんだよね。 からそんな飢えてねーし……なんつーのかな」 控えめに顔を覗き込み目線を合わせてくれた人は 「…しなくても怒んねーし、あんまビビんないで?」 と、バツが悪そうにニッと笑ってくれた。 …釣られて少し笑うと、お!と喜んでくれて。 「ふはは、ハグ最強じゃね?元気でるっしょ」 「……なに…それ…、っ…」 「わっまた泣かした!?えー俺こんなん苦手ーっ」 泣くなよー、とからから笑いながら 優しく背中を撫でてくれた。 穏やかに聞こえる心音が心地よくて、 しばらくそのまま抱きついていた。

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