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ーーー 綺麗になった身体はすっきりして、 気持ちも少し落ち着きお風呂を出る。 用意してくれていた服を着て、ほこほこ温まった身体で赤髪の人を探すと、取りに戻ってくれたらしいシーツを洗濯機に入れているところだった。 「あの…お風呂、ありがとうございました。 ……いろいろ、すみませんでした…。」 「…ちょっとは落ち着いたかよ。」 振り返る訳でもなく聞きながら操作する洗濯機はピ、ピ、と軽い音を鳴らす。 汚れた服も入れたらしく着替えていて、申し訳なくなりながら背中にぽつりと話しかけた。 「…夢を、見て……、…暗闇の中で、人の手が何本もこっちに伸びて来るんです……っおれ怖くて、ずっと逃げてて…… 目が覚めたら、あんな……本当、ごめんなさい…」 またじわりと涙ぐむおれを見てめんどくせぇ、と吐き捨て近寄って来た人に頬をつねられる。 「…洗えばいいだけだろ、泣くな。 昨日寝コケてたし、よほど疲れてたんだろ。」 あと夜中だし多分誰も気付かねぇよ、そう言い おれの腕を引くと鏡の前の椅子に座らせる。 「それよりこっち。ちゃんと乾かせよアホ。」 肩に掛けたままだったタオルでわしわしと頭を拭き、悪態をつきつつドライヤーまでしてくれて。髪に触れる大きい優しい手に安心して、なんだか参っていたおれはその人に抱きついた。 「…うぅっ…ごめんなさいぃ……」 「ッ泣くなっての、ガキかてめぇは…!」 幼児返りとかじゃねーだろうな、と狼狽えながらまた服を濡らすおれを引き剥がした人は、 気恥ずかしそうに、流す涙を掬ってくれる。 「あー、なんだ、話し相手くらいにはなってやっから呼べよ。暇なときもあるしよ。」 「…いいの…?」 「こんな風になるよりマシだ。気ィ遣うなっての。」 「…おなまえ…っ、しらな…」 「森羅だ。…ったく、いちいちぐずんな、」 子守かよ…と呟いた人は、涙どころか鼻水まで垂らし始めたおれに気付くと「あーもう…」とティッシュを取ってきてくれて。 「おら鼻拭け、んでさっさと寝ろガキ。」 「っ、ぐす……っ…、んぅ……」 すっかり弱ってしまったおれを帰りもまた抱き上げて部屋に戻し、綺麗に替えてくれていたシーツにそっと寝転ばせてくれて。 離れていく手を思わずきゅっと掴むと、 大きなため息をついていた。 「…寝るまで傍にいるから。おやすみ。」

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