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13章 ④

「え、怜、さん……っ」 「……ダメ?」 「ダメ、じゃないけど、でもっ」  心の準備が。 「ごめん……正直、ずっと我慢してたから。ちょっと止めらんない、かも」 「我慢……?」 「うん。透瑠と、ずっとこうしたかった」 「あっ」  また、キスされる。  ぞくぞくする。こんな感覚、初めてで。  感じたことのない快感の波に翻弄される。 「や、あ……」 「透瑠……」  熱を帯びた視線に晒されて。透瑠は腹の底がきゅっと締めつけられるような気がした。  覚悟は、さっきしたはずなのに。怜の気持ちが自分に向いてなくても、身体だけでもと。  でも。――好きだと言われたあとだと、こんなにも違うものなのか。 「ん……あっ」  脇腹をくすぐられ、胸の突起を怜の指が掠める。自分の声じゃないみたいで、それにも驚いて、さらに感じてしまう。 「……ごめん、やっぱ無理」  そう切羽詰まった声が聞こえたと思うと、身体が宙に浮いた。  怜が透瑠の身体を両腕で抱きかかえると、寝室へとつながるドアを器用に開けた。 「あ……」  ベッドに横たえられて、怜を見上げる形になる。透瑠に膝立ちで跨った怜が、着ていたシャツを脱いだ。その仕草だけで絵になってしまう。均整のとれた肉体に目が釘付けになる。  熱い視線に晒され、身体がどくんと音を立てた。 「透瑠……」  ささやく吐息まで熱い。優しい指が髪を解き、頭をゆっくりと撫でていく。 「怜……さん」  くすりと怜が微笑んで、 「俺も、呼び捨てにしてくれる?」  と唇を落としてきた。 「あっ……怜……」 「透瑠っ……」  服はいつの間にかすべて脱がされ、熱い肌が直接触れ合い、さらに熱さを増す。  キスを繰り返していた唇が溢れ出た唾液をたどり、首筋から鎖骨へと移動していく。 「あ、んんっ……」  胸の突起を舌先でつつかれて、腰が震える。中心が熱くなるのを感じた。  何もかも初めてで。ただ、怜の舌先、指先の動きに翻弄される。 「透瑠……可愛い」  熱っぽい視線に、透瑠の身体も熱くなる。  ゆるく勃ち上がった中心をそっと握られて、羞恥心が立ち昇ってくる。 「や、怜……」 「ん……感じてくれてて嬉しい」 「あ、ぁん、は……あっ」  リズムよく扱かれて、熱が足元からこみ上げてくる。怜の手で快感を与えられていることがさらに透瑠を煽る。 「あっ、や、はあ……ああ、あっ……」  同時に胸の突起を抓られる。もう耐えきれず、透瑠はぎゅっと目を瞑った。  ドクドクと自らの腹に白濁の液体を飛び散らせ、透瑠はそらしていた背中をシーツに押しつけた。  息が荒い。恥ずかしさで怜を見ることができない。腕を上げて顔を覆う。 「透瑠……顔、見せて」 「や、だ……」 「キス、したい」  腕をとられて、視線が絡む。怜は今まで見た以上に優しい目をしていた。 「ん……」  唇が重なり合う。また深く舌を絡め合い、身体がずくんと疼いた。  顔を離して、怜が透瑠の髪を梳きながら、遠慮がちに言い出した。 「その……透瑠……男同士、初めて……だよね」  男同士どころか。 「……悪かったな……キスだって初めてだよ、どうせ」 「ううん、それはすごく嬉しいんだけど……その」  怜の手が、足の隙間を通って。 「ここ……使うんだ」  孔の周辺をくるりと優しく撫でられた。 「!!」  予想外の箇所を触れられて、身体がびくりと硬直した。 「や……」 「……だよね。だから今日は……やめとこうかな。また、次回お願いします。……できれば近いうちに」  次を約束されて、安堵する自分がいる。  でも名残惜しそうに何度も掠めて行く怜の指が、ちょっと怖くもある。  怜と身体の関係だけでもと思ってはいたものの、具体的にどうするなんてことは微塵も考えていなかったのだ。 「透瑠……」  怜が耳元でささやく。それだけで中心に熱が集まる。 「ごめん、俺も我慢できないから……ここ、借りていい?」  そう言って、透瑠の両足を揃えて、高く上げた。 「え?」 「――ここ」  閉じた太腿の内側に、怜の昂りを感じた。お互いの中心が重なり合う。 「あっ」  先ほど熱を放出したばかりの自分のものが、すでに勃ち上がっていた。怜が腰を動かすと、中心同士が擦れて、快感の渦をもたらす。 「あ……透瑠、気持ちい……」 「あ、ン、怜……っ」  怜の昂りが大きさと硬さを増した。 「ん、もう、イく……透瑠っ」  「俺も……っ、あぁっ」  怜の熱が放たれる。同時に透瑠も再び達した。  はあはあと怜が呼吸を乱したまま優しく微笑んで、透瑠の額に自分のをこつんと軽く合わせてきた。 「……幸せ」 「……バカじゃねえの……」  ふふふ、と含み笑いをしながら頬を擦りつけてくる怜の後頭部をそっと撫でる。  そしてゆっくり降りてくる怜の唇を、目を閉じて受け止めた。

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