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第2話
「泊まっていけば? もう、終電ないだろ」
情事の後、シャワーを浴びた相沢が頭を拭きながら出て来た。
「いや、帰る」
「またか? 田宮 の家ってここから近いの?」
「教えない」
「そればっかだな」
呆れた口ぶりだけど、たまに見せる笑顔に後ろ髪を引かれながら靴を履いた。
本当はもっと一緒にいたいと思う。寝起きの相沢とか見られたらどんなに幸せかと思う。
けど、執着していることを知られる前に。
自分の気持ちをぐっと胸の奥に押し込めながら振り返った。
「もう終わりにする」
「何を?」
「この関係を。来年は卒業だし、ちょうどいい機会だから」
エレベーターのドアが閉まるとへなへなとしゃがみこみ両手で顔を覆った指の隙間から涙が溢れた。
「言っちゃった……」
遅かれ早かれ終わる関係だから、いっそのことなら自分で終わらせようと決めていた。
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