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第8話

どれ位寝ていたのだろう。目を開けると、そこには相沢の姿があった。 「うわ!」 飛び起きて後退りすると相沢の顔が近づいてきて、思わず目を閉じたら額に肌の感触が伝わる。 「貼り替えとくな」 キスされるのかもって一瞬でも勘違いして体を強張らせたのが恥ずかしくて足下を見つめていると、目の前に小さな赤い箱が差し出された。 「俺の気持ちを証明するもの」 箱の中にはシルバーのペアリングが入っていて。 「指輪? これを買いに行ってたの?」 「うん、ベタだけどわかりやすいかなって。内側見てみ」 言われて内側を見てみると、二人のイニシャルが彫ってあった。 「S.Tって僕?」 「当たり前だろ。お、お前まさか田宮(たみや) (さとし)って名前も偽名じゃねぇだろうな‼︎」 「ほ、本名だよ! だって相沢が僕の名前知ってくれてるとは思ってなかったから」 「俺って信用ねぇな」 そう言って笑いながら僕の左手を引き寄せ薬指を撫でた。 「そのままの田宮がいい。俺の気持ち信じて、この指輪はめて俺のになって。この先ずっと」 息が止まるかと思った。

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