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第2話
「全く。ヤ○ザ稼業なんて碧 に向かないのに昔っから面倒事に巻き込まれるんだから…。」
君島俊彦 は俺の親友であり、オネエでモグリの医者だ。
以前拾ってきた仔猫が脱水症状になった時も、うちは獣医じゃないわよと文句を言いながら治療してくれた。
「だってこの人、大怪我してるのに病院はいいって断るし…。それと今日は動物じゃないから慎重に診てよ。」
「だってじゃないでしょ。何でも拾って来んじゃないわよ。コイツ碧に飛び火しない?」
「この街の者 じゃなかったよ。うちの組も借金の取り立てはあの位追い込んでるから、この人の場合もそんな所じゃないかな。あっ!もう、何勝手に他人のジャケットを物色して…シワにならないよう、そのまま掛けといて。」
「借金してるってこの男が言ったの? スーツは安モンじゃないし、金に困ってそうには見え無いけどね。財布、内ポケットにあったわ。あとは…」
「ダメだって!診察代は俺が払うから、財布は戻しといて。追われた理由は深く聞いてないけど、とにかくしつこそうな連中で…」
「…うっ…。」
俺達が揉めてるのが煩かったのか、寝ている彼の目が覚め、起き上がった。
前髪越しに目を開けたまま、キミちゃんと俺を見て固まっている。
「…お目覚め、みたいね。傷は大した事ないけど出血が多かったの。あとは中指骨折。念の為、抗生物質の点滴打っといたわ。」
「あの、覚えてるか分かんないですけど意識失って、倒れちゃったんです。だから知り合いのとこに連れて来たんです…。」
すると、バツ悪そうに額を手で抑えポツポツ語り出した。
「そうか、悪いな。ここまで迷惑掛けるつもりはなかったんだ。ここの支払いを済ませたらすぐに出てく…」
声は低くて、艶っぽい。
さっきよりもよく通る声だ。
腰に響いきてヤバイ。
「いいわ、支払いは碧がするから。あとその指、暫くギブスで動かないわよ。不便だろうから碧のアパートに暫く泊めてやんなさい。」
「へっ!? 俺の部屋4畳1間だし、ガラの悪い連中もしょっちゅう来るし。それに俺は…」
「拾った犬は黙って最後まで面倒みてやんなさい。」
遮るようにピシャリと言われ、黙って彼の顔色を伺った。
キミちゃん、さっきと言ってる事が違う…。
その人は少しの間、無言だったがあっさり頷いた。
「分かった。暫く、世話になる。」
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