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第3話

「狭いし汚いですが、どーぞ。」 ゴミ袋一つ溜まるだけでも息苦しい部屋なのに、男がもう一人住むなんて。 医者(キミちゃん)の指示とはいえ、何でうちに…彼はそんなに嫌がっていないけど。 「あぁ、大丈夫だ。で、何て呼ぶ? 彼みたいに碧か、それともご主人様か。俺の事は犬とでも呼べ。」 「うん。碧で。じゃあ貴方は犬君て呼んでいいんですか?」 「ふっ…気に入った。(くん)付けなんて、そうそう呼ばれないから斬新でいいな。敬語もいらないぞ。」 適当に言っただけだったのに、拾われた犬扱いが余程気に入ったらしい。 「じゃ、このベッドを使って。俺はどっか別の所、探して寝るし。」 「ここで寝ないのか? これはダブルベッドだろ。」 不思議そうに聞かれ、思わず顔を逸らした。 「…カミングアウトするけど、実は俺ゲイなんだ。黙ってたかったけど一緒にいるとバレないか変に緊張しちゃうし、うまく振る舞える自信もないから。それに、犬君も傷つけたくないし…もう、キミちゃんは知ってる筈なのに…。」  「別に、ゲイは気にならない。それに、男なら誰だっていいわけじゃないだろう?」 犬君が言う事は、確かに尤もなんだけど。 「前髪で顔は殆ど見えないけど、犬君、好みの声なんだ。俺、すごく惚れやすいタイプで。」 「そうか、人間なら好みの声か。フフッ。なるべく喋らず従順でいてやるから、碧は拾った犬の面倒見てると思え。これでも俺は結構使えるし、出来る事なら碧と楽しくやって行きたい。」 そう言ってベッドに寝転がり、手招きした。 最初は一緒に眠るのは無理だった気持ちも犬ならとだんだん落ち着き、ベッドで背中同士をつけても意識しない程、熟睡出来た。

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