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第5話 R

今夜もボロ家に不釣り合いな香ばしい肉の匂いで、飼い犬が出迎えてくれた。 けど出された食事に殆ど手をつけず早々にベッドへ体を投げ出す。 暫くして犬君が俺を後ろから包むように抱きしめてきた。 「犬君?」 「飼い主の元気が無いな。何があった? 黙って聞いてやるから…。」 耳元で囁かれると、ヤバイんだよ。 そう思いながらも背中の体温が心地良くて、薬の事はボカしながら危険な仕事を幹部から請け負ったと言うに留めた。 俺の髪を大きな手で撫でながら、犬君は諭すように静かに語り出した。 「碧、今ならまだ間に合う。上の命令は、碧に一線を超えろと言っている。踏み込んでしまったら最後、普通の生活に戻れなくなってしまうぞ。」 「俺は勉強も出来なかったし、この道以外ないんだよ…。犬君、耳元でさっきから息が当たってる。もうあっち向いて、寝て。」 「碧。反応してるのか、ここ。」 あろう事か、半勃ちの下半身を指先で弄ってきた。 「やっ、犬君!ダメッ…待て、だよ!」 「悪いが、俺は躾がなってない。腕は不自由だが、主人の体を慰めるだけの事は出来る…。」 囁きながら、耳を甘噛みしてきた。 「ふぁん…や、やだ…。」 噛んだ耳を今度は舌で舐めながら、服の上から徐々に指を肌に滑り込ませてくる。 「はっ、はっ、あぁ…。」 首筋にキスを落とされ、頬を舌で舐められながら顎を指で引き口づけされた。 舌が生暖かくて、絡める度に甘い吐息が漏れる。 口を離すと、お互いを繋ぐように唾液が糸を引いていた。 「あっ、もぉ、止め…痛っ!」 突然、背中に痛みが走りそれが噛まれたのだと解った場所に、今度は舌で舐められ疼きに変わる。 そして全身を甘噛みしながら服を脱がされ、ベトベトだけど不快感は無かった。 「唾液なのか、汗なのか…それとも愛液か。碧の体、いい匂いがする。」 犬君は触りながら何度も火照った肌に鼻を擦り付けて来た。 「か、嗅がないでよ。恥ずかしくて…いやだ。」 「悪い、碧。もう、我慢…出来ない。」 うつ伏せにされると、俺の中へ猛ったモノが挿入された。 それから、角度を変え良い所にあたる度に何度も擦られ、部屋に充満した雄の匂いに酔いしれた。 「中、凄く気持ちいい…碧、俺の名を呼んでくれ。幾人(いくと)、だ。」 背中をきつく抱き締められ、フワフワした感覚と何度も絶頂の波が訪れる。 一度果てても、今度は正面から再度挿入され、終わらない快楽が押し寄せてくる。 行為中、幾人が長い髪を片手で掻き上げると、端正な顔が現れた。 「んっ、あぁ…幾人、いく…と、綺麗…あっ、もぉ…なか、おっきく、しないでぇ…あうっ、また、イッちゃ…」 「碧…くっ!…。」 激しく揺さぶられ一緒に達した後で意識を失い、再び目を覚ましたその日を境に、幾人は忽然と姿を消した。

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