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それにしても、マゾ扱いとはこれいかに。
真里に送ったメッセージを見返して、俺は「うぅん」と唸る。
(確かに……そういう解釈に見えなくもない、か……)
むしろ、なにも知らない真里からするとその解釈こそが正しい流れだ。
かと言って、なにがどうなって感謝をするという結果に至ったのかを説明するのは、面倒くさい。
『違う。つーか、なんの用だよ』
メッセージのやり取りは業務連絡くらいしかしない俺は、端的に用件だけを伝える。
画面の向こうで真里がどんな顔をしてるのかは知らないが、相変わらず返信は早い。
……おかしいな。コイツも社会人のはずだぞ。
『この前は、アタシも悪かったわ』
【この前】というのは、俺を殴ったあの日のことだろう。
……そもそも、俺たちが別れた原因は、お互いにあった。言い訳じゃないぞ、マジでだ。
……よし、聴いてくれ。まず、俺の悪かった点だ。
俺は真里と別れる前日に、会社の女社員と二人で飲みに行っていた。そしてそれを、真里に隠していたのだ。
字面だけを見たら俺が圧倒的に悪いかもしれないが、弁明させてくれ。
真里の悪い点。それは【独占欲がとても強い】ということ。
真里は、俺が女と二人で話しているだけで嫉妬をする。俺はそれが、心底面倒だった。
女社員と打ち合わせ兼飲み会をしたのだが、どう説明したって真里は聞き入れてくれないだろう。そう思った俺は、真里にその出来事を隠したのだ。
──だが、それが裏目に出た。
隠したということは、やましいことがあったのだろう。……それが、真里の自論。
いや、どう考えても横暴すぎるよな? 俺はお互いの為を思って隠したのに。
……一応言っておくが、一緒に飲んだ女社員には旦那がいるんだぞ。
まぁ当然、そうは言っても聞き入れてはもらえず……真里は激昂した。
からの、グーパン。俺のほっぺたを力の限りぶん殴った。……と、いうことだ。
『果がそういうこと、しないのは分かってる。なのにアタシ、カッとなっちゃって』
誰にでもなく頭の中で事情を説明し終えた俺は、真里から送られてきたメッセージに目を通す。
(別に、そこまで怒ってないんだけどな……)
そう思った俺は、トントンとメッセージを返した。
『俺は殴られたことを気にしてないぞ』
『本当?』
『おう』
マジで返信早ェな。仕事しろよ。いや、俺もか。
すると、またしても携帯が振動した。
『果、あのさ。この前の言葉、取り消してもいい?』
――言葉の、取り消し?
つまりそれは、別れると言ったことを撤回する。……という意味で、合ってるのか?
正直な話、俺は別に真里のことを嫌いになったワケじゃない。モチロン、撤回されて嬉しい。
だから素直に『これからもよろしく』と、メッセージを送った。
(間違ってない、よな?)
真里にメッセージを返すと同時に、胸の辺りがモヤモヤっとする。
──なぜか、赤城さんの笑顔が頭に浮かんだのだ。
控えめだけれど優しい笑みを浮かべた赤城さんの顔を思い出すと……少しだけ、複雑な気持ちになった。
なんでかは、分かんねェけど。
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