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 両方とも受け取った赤城さんは、お菓子が入った方の袋をジッと見ている。 「えっと、アレ? もしかして、赤城さん……甘いもの、苦手な感じッスか?」 「苦手じゃない、けど。……これ、この間オープンした……?」 「あっ、そうッスそうッス! 開店してからずっと人気絶大な、バウムクーヘンッスよ!」 「バウムクーヘン……」  袋を見ただけで、どの店のお菓子かが分かったらしい。 (赤城さんってもしかして、流行には敏感なタイプなのか?)  悪い意味ではなく、そういうイメージがなかったらビックリだ。  赤城さんは、袋の中をチラッと見た。  そして。 「――そうか」  ――心底、嬉しそうに微笑んだ。 (う、うわッ! 天使! 天使だ!)  これが、天使の微笑みってやつか! ……イヤ、たぶん俺より年上であろう赤城さんに使う言葉じゃない気もするけど!  赤城さんは流行に敏感なんじゃなくて、もしかしたら甘いものが好きなのかもしれない。 (く……ッ! ギャップ、いいッスね……ッ!)  しばらくそうして眺めていると、赤城さんが俺の視線に気付いたらしい。  ハッとした様子で、赤城さんは慌てて袋から視線を外した。 「あ、えっと……。す、すまない……っ」 「いや、全然大丈夫ッスよ」  ――むしろありがとうございます!  とはモチロン言わずに、俺は両手を横にブンブンと振った。 「それじゃ、俺は帰りますね! 服とかいろいろ、ホントにありがとうございました!」  正直、これっきりで関係が終わるのはイヤだ。  だけど、今日はお互いに仕事終わり。明日も平日だし、あまり長く引き留めるのは申し訳ない。 (甘いものが好きって分かったし、今度どこかに誘ってみよう!)  ポジティブシンキングした後、俺は赤城さんに頭を下げた。  するとなぜか、赤城さんは考えごとをしているような表情をしている。 (ンン? もしかして、ヤッパリ甘いものが苦手なのか?)  浮かれてしまった自分が恥ずかしくて、俺は内心オロオロと慌てていた。  ……しかし、そういうワケではなかったらしい。  赤城さんは、意外なことを口にした。 「本渡君。今日はこれから、予定とか……ある、かな?」 「予定、ッスか? 別にない、ッスけど」 「そうなんだ。よかった」  にっこりと、微笑んだ後に。 「――よければ、一緒にバウムクーヘン……食べない?」  ──まさかの、お部屋へご招待イベントが発生したのだ!  俺は慌てて、赤城さんに詰め寄った。 「えっ、えっ? お、俺は全然いいッスけど、赤城さんは大丈夫なんスか?」 「うん。僕がひとりで食べるよりも、せっかくならふたりで食べた方が美味しいと思うから」  赤城さんが、ムリをしているようには見えない。  ……つまりこれは、本心からのお誘い? (――思いがけないラッキーデーだな、今日は!)  俺は勢いよく頷いて、赤城さんの家へお邪魔することにした。

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