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 いきなり現れた、赤城さんの彼氏。  ……本人から説明はされてないけど、たぶん合ってるだろう。  自分の方も訊きたいことがあったはずなのに、赤城さんはまず、彼氏の疑問を解消させることにしたらしい 「この人は、本渡果くん」  彼氏が望んだとおり、俺の紹介をした。  対する彼氏は、赤城さんに対して不遜な態度のままだ。 「鈴華とどんな関係なワケ」 「雨の中倒れていたところを放っておけなくて、介抱してあげたんだ。それで今日は、そのお礼に来てくれただけだよ」 「ふぅーん……」  俺の話をしているのに、俺は蚊帳の外っぽい。 (どうしよう。俺はなにか、言うべきなのか?)  ――かと言って『よろしくな!』って自己紹介する雰囲気……でも、ないしなァ……。  なにか言うべきか、それともこのまま黙っているべきか。  悩んでいると、彼氏が俺を睨みつけた。 「オイ、お前」  睨まれるとさすがにいい気はしないが、俺は赤城さんの彼氏を見る。  俺だって、凄めばそれなりに怖いタイプだ。むしろ、ちょっと難しい顔をしていても道を譲られる。  だが、別にケンカ好きとかってワケじゃない。怖いモンは俺だって怖い。  つまりなにが言いたいかと言うと……こう、不機嫌そうに睨まれると、それだけで畏縮してしまうということだ。  内心ビビってる俺を見て、彼氏は言葉を続けた。 「オレは江藤(えとう)兼壱(けんいち)。鈴華の恋人だ」 「兼壱っ!」  予想外にも、彼氏はすぐに自己紹介をし始める。  すると、赤城さんの顔が一気に赤くなった。 (赤城さんの、赤面……ッ)  それを引き出したのは、目の前にいる彼氏。  ……若干、モヤモヤするぞ。バウムクーヘンが好きってバレたときの照れ顔とは、違う表情だ。 「本渡果、ッス。……えっと、江藤さん――」 「『さん』とかやめろや。呼び捨てでいいからよ」 「……江藤は、赤城さんのこと……本当に好き、なのか?」 「は?」  江藤の眉が、不可解そうに寄せられる。  ……イヤ、まぁ、それはそうだよな。  初対面の奴に、いきなり『恋人のことを本当に好きなんですか?』って訊かれたら、困るだろうさ。……俺だって、ポカンとする。 (俺、なに訊いてんだよ、マジで……)  だけど、訊かずにはいられなかった。 『――女の子でも、殴るんだね……』  赤城さんが言ってた、さっきの言葉。  それがどうしても、引っ掛かっているからだ。  江藤の態度は、どう見ても温厚さとはかけ離れている。  ……正直、赤城さんとは不釣り合いだ。  それでも、江藤と赤城さんは付き合ってる。  なら、それがどうしてなのかを気にしたって……知人としては、おかしくない。  ……よな?  江藤は不愉快そうに曲げた口角を。  ――ニッと、吊り上げた。  そして。 「――オレ以外に、誰が鈴華のこと愛してやれるんだよ? こんな、ドがつくヘンタイのことをな?」  ……あまりにも下品なことを、口にした。

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