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定時ピッタリに仕事を終えた俺は、今。
──赤城さんに、電話をかけていた。
たった数回のコール音が、やたらと心臓に悪い。
携帯を握ってる手なんか、変な汗をかいてるくらいだ。
それでもしっかりと携帯を握り、相手が電話に出るのを待つ。
(赤城さん、お願いします……ッ)
留守電に切り替わってしまうまで、かけ続けよう。
それでも心臓に悪いコール音で、何度か諦めかけた。
その時だ。
『――はい』
――赤城さんの声が、聞こえたのは。
俺は携帯を握り直し、声を絞り出す。
「あ、もしもし! 本渡、です!」
口の中は、緊張のせいでカラッカラだ。
携帯から聞こえる赤城さんの声は、戸惑っているように聞こえる。
『本渡、くん? どうして、電話なんか――』
「大丈夫ですか?」
話を変えられたり、逃げられたりはしたくない。
俺は話し途中の赤城さんを遮って、本題を突きつける。
(たぶん、こういうところが『考えるより行動するタイプ』ってことなんだろうなァ……)
そうすると、赤城さんが小さく息を呑んだのが分かってしまった。
『……っ! ……な、なんの……こと、かな』
「赤城さん」
赤城さんはきっと、ウソを吐いたり誤魔化したりするのが苦手なんだろう。
動揺したのがすぐに分かったし、誤魔化そうとしたのだって分かった。
だから俺は、少しだけキツめに赤城さんの名前を呼んだ。
すると赤城さんは黙り込んでしまい、なにも話そうとしてくれない。
(ヤッパリ、電話じゃダメ……だよな)
ならば、と。
俺は用意していた選択肢で戦うことを決意する。
「赤城さん、今から会いに行きます」
『えっ? い、今からっ? そっ、それは駄目だ……っ!』
「赤城さんが会いたくないっていうのは、分かってるッス、スミマセン。……だけど、どうしても会いたいんス。……今、どこにいるんスか?」
『えっと…………そっ、外、だ……っ』
「分かりました、家ッスね。今から向かいますので、待っていてください」
『な、なんで分か……っ! ち、違う、あのっ、本渡く――』
赤城さんの声は、なにかを言いたげだった。
それでも俺は、聞こえていないフリをして、通話を終わらせる。
……赤城さんは『外にいる』と言っていたが、あんなの絶対にウソだ。
(ヘタくそ……ッ!)
あのウソは、俺が来ることを拒絶したい……という意味だろう。
俺に会いたくないか、会ってはいけない状態なのか……。
(会いたくないんだとしたら、全力で謝ろう。……そうじゃなくても、全力で謝ろう!)
思い立ったが吉日、善は急げ、日進月歩!
俺は赤城さんの家を目指して走り始めた。
……最後だけ、意味がちょっと違うって? こういうのは雰囲気が大事なんだよ、雰囲気が!
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