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 インターホンを鳴らしても、赤城さんが出てこない。 「クソ……ッ!」  聞いて驚けよ。これで十二回目のインターホンだ。気分は借金の取り立てだぞ。  優しさの塊みたいな赤城さんのことだから、さすがに諦めて出てくるかと思ったが……意外と強情で、出てきてくれない。 (まさか、本当に外にいるのか?)  俺からの電話に動揺していただけで、ウソを吐いたワケじゃなかった……とか?  俺はジッと、インターホンを見る。  おそらく俺の姿は、カメラ越しで赤城さんに見えているだろう。 「赤城さん……頼むから、会わせてくれ……ッ」  俺はあなたに、謝らなくちゃいけないんだ。  それに……怖かったはずなのに、俺を逃がしてくれたあなたに……お礼だって、言えてない。 (せめて、一目だけでも……ッ)  懇願するように、インターホンを押そうとして……指を、離す。  それは、諦めたからではない。  ――携帯が、振動したからだ。  メッセージを受信したときの、振動。  俺は恐る恐る、メッセージの送り主を確認する。  すると液晶画面には、この家の家主が表示されていた。 『新着メッセージ 赤城鈴華』  俺は最後の望みをかけて、メッセージを確認した。 『今の僕は、きみに嫌われるような姿をしているかもしれない。だから、帰ってほしい』  ――ヤッパリ、家の中にいるんだ。 『俺は、あなたを嫌いになったりしない。だから、会いたいです』  言いたいことが、沢山あるんだ。  顔を見ないと、安心できっこない。  すぐに返信して、赤城さんからの返事を待つ。  すると……。 『鍵は、開いている』  そんなメッセージが届いて。  ――俺は考えるよりも先に、玄関の扉を開いた。 「――赤城さんッ!」  靴を脱いで、並べもせずに中へ入る。  気分は借金の取り立てから、警察になった。身元確認というやつだな。  手当たり次第に赤城さんの家を物色し、ひとつの部屋に入る。  そこは、赤城さんが俺を介抱してくれていた場所。  ――そこに、赤城さんは居た。 「――本渡、くん……っ」  赤城さんのほっぺたは、あの時よりは腫れが引いている。  それでも、色白な肌には傷が目立つ。  キレイな顔は、悲し気に歪んでいる。  それでいて、女の人みたいにキレイな脚が覗いていて――。  ……え? なッ、なに、何で……ッ? 「――赤城さん? どうして、ワイシャツ一枚だけ、なん……スか?」  シンプルなデザインの、ワイシャツを一枚。  自室の床にペタリと座り込んだ赤城さんは、なぜか……。 (な、なんで……な、なな……ッ?)  ――ワイシャツ一枚だけを、羽織った姿だった。  その光景が、あまりにも扇情的で。  ――俺はメチャクチャ……動揺、してしまった。

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