26 / 69
4 : 4
ワイシャツから覗く、脚。
よく見ると、痣になっている箇所がある。……それに、赤く腫れているところも見えた。
「すまない。こんな、恰好で……っ」
赤城さんが言っていた『きみに嫌われるような姿』とは、このことなのだろうか。
俺は赤城さんに近寄り、赤城さんと同じ目線になるよう、しゃがみこむ。
距離を詰めたら、赤城さんの顔だけを見ていられるからだ。
……同じ男だけど、赤城さんの素肌は……なんとなく、目に毒だったから。
だけど赤城さんは、俺と視線を合わせようとしなかった。
……が、観念したのか。
「兼壱が、来て……っ」
俯いたまま、こうなった理由を答えてくれた。
(それって、えっと……つまり?)
ありていに言えば……セックスした後、ってことか。
……確かに、それは言い出しにくい。
(なかなか出てくれなかったのは、そういうことだったのか……)
きっと、部屋の掃除とかなんとか……とにかく、いろいろなことをしていたんだろう。
だから、俺がどれだけインターホンを鳴らしても出てくれなかったんだ。
言葉少なながらに事情を察していると、赤城さんがポツリポツリと言葉を漏らした。
「この間は、兼壱の態度が悪くて……不快な思いをさせてしまって、すまなかった。言い訳がましく聞こえるかもしれないが、あれでも一応……兼壱が来る予定はないと、確認して……っ」
服を返しに行く前にかけた、アポイントの電話で。
赤城さんはスケジュール帳らしきものを、ペラペラと捲っていた。
(アレは、江藤が来るかどうかってのを確認してたのか……)
念には念を入れて、確認してくれたんだろう。
赤城さんはワイシャツで必死に下を隠しながら、黙ってしまった。
(……なんか、妙な気分)
視線を外して、なんとか言葉を探す。
「俺の方こそ、この間は……事情も知らずに、スンマセンでした。それに、赤城さんのこと……江藤から、守れなくて……」
「そんな……っ! そんなこと、きみが気にすることじゃ――」
「それでも!」
食い気味に、赤城さんは俺をフォローしようとした。
俺はそれがイヤで、赤城さんの言葉を遮る。
「――俺は、赤城さんが傷付く姿を見るのはイヤだったんですッ!」
結果的に、俺は赤城さんを見捨てた。
無事じゃ済まないだろうと分かっていたのに、赤城さんを置き去りにしてしまったのだ。
どんなに言葉を重ねたって、俺が言うことはキレイゴト。
赤城さんに笑われたって、ガッカリされたって、かまわない。
それなのに、赤城さんは……。
「着替えるのを、待っていてもらえる、かな。よければ、お茶でも飲んでいかないかい? ……もし、よかったらだけど……っ」
――ヤッパリ、優しかった。
俺のことを、追い出さない。
それどころか、会話を続行してくれる。
俺は赤城さんからの提案に、速攻で頷いてしまった。
ともだちにシェアしよう!