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俺の不思議発言から、数秒。
お互いがお互いに驚きながら、しばらくの沈黙。
(お、俺、は……なにを、言ってるんだ……?)
このタイミングで、あんな言葉。
(こんなの、まるで……こ、こッ、告白じみてるじゃねェか……ッ!)
このままでは、江藤に殴られるような展開になってしまう。
事実として語弊があったのだから、それを解かなくては。
「や、えっと、変な意味じゃなくてッ! そう、男としてッ! 男として、俺は好きな人に悲しい顔させたくないな~って言うか……ッ! イヤ、彼女怒らせてグーで殴られたんで、なにを言っても説得力皆無ッスかね! ハハッ、ハハハッ!」
あまりにも。
あまりにもヘタすぎる、フォロー。
沈黙に耐えかねた俺は、なんとかマシな言葉を探して取り繕ってみる。
だけど口を開けば開くほど、バカを露呈しているような……そんな感じになってしまった。
(あ、穴があったら入りてェ! むしろ、掘るか? 穴、掘るか! いやいや、ココは赤城さんの家だ! 掘るならどっかの公園とかだろ、俺!)
頭ン中も大パニックだ!
正面に座っている赤城さんのポカンとした表情。それもあって、俺はどんどんいたたまれない気持ちになってくる。
しかし、俺の必死さが伝わったのだろう。
「……あっ、えっと……っ? もしかして、本渡君は今日……僕を、その。慰めに来て、くれた……の、かな?」
赤城さんはそう言って、いい感じの落としどころを見つけてくれた。
当然俺は、ジャンジャン乗っかる。
「そ、そんな立派なモンじゃないッスけどね! でも、だいたいそんな感じッスよ! えぇ、ハイッ!」
「やっぱりそうなんだねっ。……ふふっ」
身振り手振りでなんとか乗り切ると。
赤城さんが、クスリと笑う。
「本当に、本渡君は優しいね。……来てくれて、ありがとう」
優しすぎる言葉を添えて。
(――笑って、くれた……ッ)
悲しそうな感じじゃなくて、辛そうな感じでもない。痛々しくもないし、ガマンもしてなさそう。
――赤城さんらしい、小さくて控えめな笑い方だ。
「そうだね。本渡君は好きな子を大切にできそうだ」
「や、はは……あざっす」
赤城さんの笑顔が見られて、嬉しい。
バカな俺でも、赤城さんを笑わせることができたなら。それは、嬉しいに決まってる。
なのに、なんでか……胸が、痛い。
――分かりやすく言うなら、罪悪感だ。
(彼女がいるってのに、なんで俺は……あんな、口説くみてェな言い方しちまったんだ……ッ?)
赤城さんにだって、江藤という彼氏がいる。
だったら俺の発言は、不誠実極まりないってモンだ。
深い意味はなかったし、全然……江藤から赤城さんを奪おうなんて、そんな気持ちもない。
それでも俺の発言は、あんまりよくなかった。
……だけど。
「もしかして……素直に褒められると、本渡君は照れちゃうのかな? ……ふふっ、若いね」
赤城さんは、笑っているのだ。
凄く、すごく嬉しそうに。
(よかった……)
胸の中にある、小さな罪悪感。
俺はそれを、赤城さんの笑顔で……見えなくなるまで、塗り潰した。
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