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 江藤の態度は、変わらない。 「ハッ! あっそ。……別にどっちでもいーわ」  プレイしているゲームの区切りがついたのか、江藤は携帯をテーブルの上に置く。  そして、乱暴に頭を掻き始めた。 「ダチだろーがセフレだろーが、大して変わんねーし」 「変わるだろ……!」 「変わんねーよ」  テーブルの上にあるコーヒーカップを掴み、江藤は俺を睨む。 「――勘違いすんなよ、本渡。鈴華が依存してるのはオレだ」  セフレになったとしても、気にしないと言っていたくせに。  その視線は、まるで……突き刺すように、鋭い。 「お前がセフレになったところで、なにも変わんねー。鈴華が依存してるのはオレだ。……お前はその対象になれねーんだよ」  いつから江藤はこの家に来ていたのか。  出されていたコーヒーは、ぬるくなっていたらしい。  一気にコーヒーを飲み干した江藤は、それだけ言って、会話を終わらせる。  それと同時に、江藤の携帯がけたたましい音を鳴らした。 「おう、オレだ」  電話がかかってきたらしい。  江藤はイスから立ち上がり、リビングから出て行く。  その様子を、俺と赤城さんは黙って眺めていた。 「……本渡君。よかったら、座って?」  ずっと立っている俺に、赤城さんがイスをすすめる。  赤城さんは……どことなく、元気がなさそうだ。 (それも、そうだよな……)  好きな人に『セフレを作ってもいい』と言われて、落ち込まない人がいるワケない。  赤城さんはきっと、すごく繊細な人だ。そんな人なら余計に、気にならないワケないだろう。 「兼壱が、その……品のないことを言って、すまなかった」 「や、別に……」  ヤッパリ、どことなく元気がない。 (だから、俺は……ッ)  ――あなたのそんな顔、見たくないんです。  そう言ってしまえたら良かったのに、今は……どうしても言えない。  だから、というワケじゃないけど。  ――俺は、失言してしまった。 「――赤城さんは、マジで江藤のこと。……好き、なんスよね?」  そう言われて、赤城さんがどんな顔をするのかなんて……簡単に、想像できる。  なのに俺は、どうしても訊きたくなった。  ……返事だって、分かってるのに。 「――当然だよ」  そう答える赤城さんは、笑顔を浮かべていた。  ――俺があまり好きじゃない、悲しそうな笑みを。  その顔をさせてしまったのは俺だけど、江藤でもあるはずだ。 「……なにが、セフレだよ……ッ」  赤城さんがそんな相手を、作るはずない。  一途で、相手を大切にする。  そういう人のはずなのだから。  誰に言うでもなく呟いた言葉は、そのままなかったことになるはずだった。  だけど、どうやら。 「本渡君。ひとつだけ、言っておきたいことがあるんだ」  赤城さんには、聞こえてしまっていたらしい。

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