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第3章 第2話(4)
「失礼します」
会議室のドアをノックして中に入ると、すでに三、四十人の人間が集まっていた。その中から坂巻班のひとり、豊田を見つけて近づいていく。
「豊田さん、すみません、これ、坂巻さんから追加で預かってきました」
「ああ、ご苦労さま。助かったよ。で、主任は?」
「パワーポイントの内容、最終チェックしてからいらっしゃるそうです」
「了解。じゃあ、もうそろそろかな」
言いながら、腕時計を確認する。そして、すぐそばにいた女性社員に群司が届けた書類を手渡して、追加で配るよう指示を出した。
「あの、俺、見学させてもらってもいいですかね? よければ一緒にって、坂巻さんからも許可いただいたんで」
「ああ、いんじゃない? 八神くんもデータまとめ手伝ってくれたしね。待って、いま席用意するから」
ありがとうございますと礼を述べて、邪魔にならないよう部屋の隅に移動する。会議室のスペースに合わせ、楕円に並べられたテーブルに等間隔に椅子が配置されていた。側面の壁の一方には巨大なプロジェクター。テーブルに着けるのはせいぜい二十名ほどで、それ以外は後方に椅子のみが用意されていた。会議を見学するとなれば、群司の席もその並びに用意されるのだろう。
ざっと見渡す中で、プロジェクターにより近い席にひとりの女が座っている。年齢は二十代後半くらい。身につけている服や装飾品、手入れの行き届いた髪や肌、爪など、一見してすぐにただの会社員などでないことがわかる。纏 っているオーラそのものが、一般人とはあきらかに異なっていた。
おそらくはあれが、噂の社長令嬢なのだろう。たしかに、女優と言っても通るような華やいだ美貌の持ち主だった。
手もとの書類に目をやりながら、隣に座る人物となにごとかを真剣に話し合っている。
何気なく視線を横に移して、群司はかすかに目を瞠った。そこに座っていたのは、つい先程、食堂で群司の真正面に座っていたあの男だった。
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