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第6章 (2)
背後に立っていたのは坂巻で、自販機で購入した缶コーヒーを手にしていた。
「あ、お疲れさまです」
「群ちゃんにしてはめずらしくぼんやりしてたね。さすがに学業との両立がきつくなってきたか?」
言いながら、すぐわきの椅子を引いておなじテーブルに着く。
「あ、いえ。大丈夫です。ちょっと考えごとをしてただけなんで」
「結構深刻そうだったけど、無理すんなよ。悩んでることがあるなら、いつでも相談に乗るし」
坂巻の気遣いに、群司はありがとうございますと礼を述べた。
「ま、群ちゃんはできすぎるくらい優秀な子だからさ、ちょっとしたことなら自力で解決できちゃうんだろうけど、そこは年の功。俺もだてに中年街道を突き進んでるわけじゃないからね。ある程度のことなら、アドバイスくらいしてあげられると思うよ?」
「そうですね」
群司は頼りにしてますと笑った。
坂巻は、手にしていた缶コーヒーのプルトップを引き上げる。それから、音を立てて味わうように中身を啜った。
「俺はね~、群ちゃんのこと、超頼りにしてんのよ。だからさ、いつでも元気にバリバリ働いてもらえるモチベーションを保たせてあげるのは俺の役目だと思ってるわけ」
「あ、そうなんですか?」
「そうなのよぉ。だからさ、やっぱ大学の研究室残りますとか言われて、いなくなられちゃったら寂しいなぁ……って、ごめん。いまのは失言だった。べつに泣き落とし作戦ってわけじゃないから。群ちゃんは気にしないで、自分の将来を思うとおりに決めなさいね。大事なことなんだから」
「あ、はい」
頷いた群司に、坂巻はうんうんと満足げに頷いた。
「ようするに、俺はそのぐらい群ちゃんのことがお気に入りっていうだけの話。うちに来なくても、一緒に飲みに行ったり飯食ったりはできるしね」
だからとりあえず、解決できない悩みができたらいつでも相談しなさいと言う。そんな会話のあとで、坂巻はふとなにかを思い出したように唐突に話題を変えた。
「そういやさ、まえに言ってたあれ、見つかった?」
「あれ? と言いますと?」
「ほら~、あれだよ、あれ。一見地味だけど、蓋を開けたらメチャクチャ美人っていう、例の謎の佳人」
予期せぬ話題を振られて、群司は思わず目を瞠った。
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