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第9章 第3話(3)

「さっきは一方的に決めつけちゃいましたけど、はじめて食堂で俺を見て驚いたのは、あの時点で俺がだれか、気づいたからですか?」  群司の問いかけに、早乙女は頷いた。 「優悟さんから、年の離れた弟がいることは聞いていた。実際に君を知っていたわけではないけれど、面差しが……とくに目もとがよく似ていて、ひと目でわかった」  早乙女は不意に、沈んだ表情になり、手にしていたスプーンをスープ皿に戻した。  その様子を、群司はじっと見守る。  属す組織は違えど、おなじ目的で天城製薬に潜入し、ともに協力し合いながら繋がってきたふたり。  優悟を喪って以降、早乙女は孤独の中、群司とはまた違った想いを抱いてこの一年を過ごしてきたのだろう。 「ルイさんは、兄貴のパートナーだったってことでいいんですよね?」  ごく普通に、それがもっともしっくりくる関係性だと思って尋ねたのだが、早乙女は途端にパッと顔を上げた。 「その、仕事面のことは置いておいて、プライベートの部分でってことですけど」  さらに踏みこんで尋ねると、早乙女は意外なほど狼狽(うろた)えた様子を見せた。 「ち、ちがっ。そういうんじゃないっ」  あわてて否定する早乙女に、群司のほうが逆に驚いた。 「えっ? 付き合ってたんじゃないんですか?」 「違うっ。優悟さんは、ゲイじゃないから」  必死に言い募った早乙女は、首筋まで赤くなっていた。  色が白いので、感情の変化が如実にあらわれる。 「あ、えと、すみません。なんとなくそうなのかなって勝手に思いこんでて。あの、とくに深い意味とかはないんで」  いたたまれなさそうに俯く早乙女に、群司は弁解した。  兄の優悟が同性を恋愛対象としていなかったことは群司も知っている。だが、早乙女は……。  優悟を弁護する際の言いまわしが少し気になったが、さすがにそこまで踏みこむのは気が引けて、結局それ以上質問を重ねることはできなかった。

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