解析済みのデータをまとめていく中で。群司はふと、参考文献の掲載先として記されているリンクアドレスに目を留めた。リンク先に飛ぶと、たしかに薬物関連の実験結果をまとめた論文に行き着く。だが、アドレスの中にある「０７２８」の数字に違和感をおぼえた。 　ただの偶然と言ってしまえばそれまでである。それでも、一度目に留まると、なにかの符合のように思えてならなかった。 「八神？」 　突然作業の手を止め、考えこむ群司を不審に思ったのか、如月が声をかけてくる。群司はその顔をじっと見返した。 「琉生さん、誕生日っていつ？」 「え？」 　唐突に訊かれて、面食らった顔をした。 「琉生さんの誕生日、いつですか」 「二月、だけど……。二月十七日。それがなにか……？」 「この論文、なんか不自然じゃないですか？」 「論文？」 　話の趣旨がよく呑みこめない様子で如月は当惑を滲ませた。 「たしかにバイオ医薬関連の実験データがまとめられてますけど、わざわざリンク先を載せる必要がある内容とは思えない」 「それは優悟さんが、自分に必要な参照先として示しておいたんじゃ……」 　付け焼き刃で身につけた知識を補足するためのもの、ということなのではないか。 　如月の見解に、群司はそうかもしれないと同意しつつ、でも、と付け加えた。 「それとは違う意図があるように俺は思うんですけど、じゃあどういうことかっていうのをたしかめてみてもいいですか？」 　あえて確認した群司に、如月は不安そうな様子を見せながら頷いた。 「たしかに兄貴は素人で、専門知識が不足している部分を補うための文献もいろいろ漁っていたのかもしれない。でもこの文献のリンクをわざわざ記したのは、たぶんそういうことじゃない気がするんです」 　言いながら、リンクアドレスの中にある数字部分を、０７２８から０２１７に置き換えてエンターキーを押す。兄の誕生日から如月の誕生日に入れ替える仕掛け。群司の読みは見事に当たり、エラーになるどころか、そこからさらに別のリンク先へと転送されて、ひとつの動画にたどり着いた。 「これ……」 　横から画面を覗きこんでいた如月が息を呑み、かすかに声をふるわせた。そこに、ある人物の姿が映っていた。